相手の長所十個言わないと出られない部屋 目を覚ますとそこは異界でした。
「じゃ、ねぇんだっつの! ああ、もう!」
長身の男は声を荒げながらもう一度戸を蹴った。紅色の鉄扉はびくともせず沈黙を貫いていた。
甘寧と凌統は覚えのない一室にいた。物がなく、狭い部屋は二人が寝転べば満員となるような空間だ。まずそんな状況で目を覚ました凌統がひと騒ぎし、甘寧も意識を取り戻した。どこだここという疑問を一通りぶつけ合い、とにかくぶっ壊すという提案も一通り試した。体力のある凌統が息切れするほど、扉や壁や天井、床に向かって攻撃してみたが、どれも体を痛めるだけであった。
早々と物理攻撃が効かないことに気付いた甘寧は、嘆いて苛立つ男を置いて壁を見渡していくことにした。冷たい石壁を眺めていくうちに、一ヶ所だけ変色しているのを発見した。
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