カシラの拠り所 逃げ出した宴会場に戻る羽目になったのは、夜も更けて虫の声以外黙る刻だった。眉をひそめた男が訪ねて頭を垂れるのだ。曰く、カシラを連れ帰ってほしい、と。酒のせいで頭が痛み、やっと休める頃にそう宣った甘寧の部下を無遠慮に睨み付けた。顔を青くしながらも奴は怯まず、お願いいたします、と静かに告げた。
こいつは錦帆賊からの手下らしい。度胸があるのも頷ける。訪問内容や時間には大いに不満があるものの、この男の態度は気に入った。苛立ちは全部あいつにぶつけてやろう。
外套を羽織って並んで歩く。隣の男は疲れた表情を見せつつ、しっかりとした足取りで見知った城の宴会場へ誘導した。こいつもそれなりに飲まされたであろうに、飲んだくれの右腕ってのも大変だな。そう思うと同情心からお喋りでもしてやりたくなった。
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