アイドルデュオの権と凌 スポットライトが肌を灼く。耳元で爆発する歓声に、リズムを刻む鼓動がかき消されそうになる。
「みんな──! 愛してるぞ──!」
孫権の甘い声が会場を包む。彼は袖で見守る周泰に向かって、両手でかわいらしくハートを作った。瞬時にファンたちの「周泰!周泰!」の大合唱が起こり、凌統は思わず目を伏せた。
(また……)
客席のまあ、わりと前列──ファンクラブ指定エリアにいるあの男の存在が気になって仕方ない。甘寧。いつも舎弟たちを引き連れて、妙に真面目な顔で見ている男。
「凌統!」
孫権の呼ぶ声で我に返る。振り付けの位置をすこし、間違えていた。ふたりしかいないのだから、目立ってしまって仕方がない。慌ててポジションに戻ると、関係者席から父・凌操の視線を感じた。
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