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    ka_be0320

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    ka_be0320

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    パラくん新章に向けた相棒以上恋人未満の善依。善さんお誕生日おめでとう!

    your justice「う〜……」
    「おい善、しっかりしろや〜」
    「若〜〜〜……」
    「……ったく」
     数時間前に年が明けた。CANDYでは大量のシャンパンの飛沫が宙を舞った。客、キャスト、ボーイ……この日だけはそんな立場はみんな捨てて、誰も彼もが大いに盛り上がっていた。
     俺も人に勧められるがままに酒を飲み、心地よく酔った。だが善は俺以上に酒を飲み(客に勧められたら断れないやつだ)、かなりやられたらしい。いまは人々がはけたCANDYのソファの上でのびている。
    「液キャベ買って来たるさかい、ちょっと待っとれ」
     財布と羽織をひっ掴む。薬局はすぐそこだから、十分あれば帰ってこれる。
     一歩踏み出そうとすると、くんっと後ろに引っ張られる感覚がした。振り返ると、羽織の裾に善の指が引っ掛かっていた。
    「なんや? 寝ぼけとるんか?すぐ帰ってくるから待っとけって」
    「うっ……うぅ……」
     ぐす、と鼻をすする音が聞こえる。
    「な、なんで泣くん〜!?」
     よく見ると善の目元はしとどに濡れていた。親に置いていかれそうになる子供みたいな顔をしている。確かに泣き上戸なところがある男だが、こんなきっかけもなく突然泣かれるとどうすればいいか分からない。
     羽織の裾を掴んだまま、善がソファから起き上がろうとする。
    「ちょ、待て待て待て! まだ具合悪いやろ、寝とけって!」
    「若……私は……怖いんです」
     具合が悪いせいか、なんなのか。突拍子もない言葉だった。虚ろな目は、善ではない誰かみたいだ。
    「……なにが怖いんや?」
     一旦手にした財布はテーブルに置き、善の前にしゃがみこんだ。俯いた善の顔を下から覗き込む。善の目に溜まった雫が、ぽつりと俺の頬に落ちた。
    「最近、自分の正義がなんなのか分からなくなるんです」
    「どうして?」
    「それは、その……すみません、言えません……」
    「…………」
     善の様子に違和感を覚えたのは数ヶ月前。偶然、なにかにひどく動揺しているのを見かけた。善は携帯端末の画面を見て目を見開いていた。手も少し震えていたかもしれない。
     それからは何事もないように繕ってはいたようだが、俺から見たらその繕い方は下手くそだった。
     善の真っ直ぐでまじりけのない瞳を曇らせる「なにか」を俺は知らない。知らないけれど、俺の好きなそれを濁す「なにか」を見過ごすことはできない。
    「お前は、お前の信じるように動いたらええ。これまでの善の生き様が、ちゃんとお前を善いほうに連れてってくれるわ」
     膝元で固く握られている善の拳に手を添える。……こんなに強く握ったらいかんよ。ゆっくり。結び目を解くみたいに、善の拳を緩めていく。そうしてできた指の隙間に、自分の指を絡める。甘い恋人繋ぎとは違う、歪な絡まりかただった。
     まだ善の目は不安で揺らいでいる。今日は……本当はこんなしけた日にしたないのに。いつもみたいに笑ってくれたらええのに。
    「……それでも、どうしても不安なときはな……俺のこと考えたらええ。俺のことだけ考えろ」
    「若の、ことを?」
    「あぁ。……昔、撃たれそうになった俺を庇ってくれたことあったやろ? あんときからな、善はずっと俺の正義の味方なんやで」
    「正義の……」
     善の手をぎゅっぎゅっと握る。少し弱い力で握り返された。涙は止まっているようで、眠たいのかとろけた目をしている。
     俺のことだけ考えろ、なんて。こんなことを言ったら、善は本当にその通りにしてしまうだろう。ずるい言い方しか思い付かない自分が少し嫌になる。
     それでも、善の目に暗い影はもう見えなかった。
    「もうちょっと休んどき。な?」
     善は小さく頷き、ぱたんとソファに倒れ込んだ。すぐに寝息が聞こえてくる。たくましい胸元が呼吸で上下している。
     目が覚めたら、どうかいつもの明るい彼であってほしい。なんてったって今日は。
    「お前の誕生日やんか」
     寝ている善の脇腹をそっと撫でる。
     正義の味方だって、誰かに守られないといけない。
    「安心し。善は大丈夫やから」
     よいしょっと立ち上がる。縮こまっていた体をぐっと伸ばし、もう一度財布を握りしめる。
    「さて、と。薬局行って液キャベと……ん、そやな。味噌汁くらい、作ってやるか」
     できた味噌汁は少ししょっぱくて。だけど善が笑いながら「美味しい」と言ってくれたから、俺も一緒に笑った。
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