silent glory仄かに覚えのある香りがして思わず振り向く。けれどもあの人はいなくて、木漏れ日がきらきらとこぼれているだけであった。
「...」
リンクは黙って便箋を手に取り、家にいつものように入った。
少し掠れた字になにか引っ掛かりを覚える。
恐る恐る封を切り、便箋を取り出した。
─
『拝啓 』
書き出したはいいものの、らしくない行為と言葉に苦笑が漏れた。ちょっと畏まり過ぎかと思いつつ、でもまあ時間が大分空いているしいいかと筆を持ち直して文章を頭の中で組み立てる。
先ず読んで貰えるだろうか。こんな人間は忘れられてるかもしれない。...忘れた方がいい。
皆にかけるような言葉じゃなくて、お前だけに伝えたい事があるのに、上手く言い表せない。会いたい、なんて今更どの面を下げて言えばいいか。傍に居てなんて頼めもしない。素直な言葉じゃなくて、捻くれた言い回しばかりが頭に浮かぶ。
1203