ハッピーエンドのないシナリオ 1
好きとか、そういうことはひとつも言わなかった。
同郷のよしみで、のノリで切り出して、「同じ隊のほうが時間も合わせやすいでしょう?」なんて都合の良さを下心に被せた。冗談に混じって本気を覗かせ、でも決して本心は晒さないように慎重に包んだ。
セフレのお誘いは、そうやってぺらっぺらの紙みたいな軽薄さでおれの口から吐き出されたのだ。
水上先輩はぱちくりと驚きの表情を見せたあと、「はぁ」とか「でもなぁ」とか言いながら渋っていたけれど、おれが一番心配していた嫌悪感は見えなかった。
「興味があればでいいんで」
と引く素振りを見せたら、
「まぁ、一回試してみるか」
と乗ってきた。
一回が二回になって、二回が三回に。十を超える頃にようやく、数えるのをやめた。ネットで買った二十個入りの徳用のコンドームも半分くらいに減っていて、これを見るたびに(アホやなぁ)と思う。ちなみに最初のはコンビニで買ったやつやから、この箱は二代目だ。
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