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    hananokosituki

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    hananokosituki

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    練習ルツ🎈🌟ちゃん18

    金木犀が好き

    金木犀「あ」

    「おや?司くん、どうしたんだい」

    司くんがある方向を見つめておもむろに立ち止まった。並んで歩いていた僕は司くんを追い抜かしてしまい数歩先で立ち止まる。

    「ん……いやなに、昨日までは綺麗に咲いて秋の香りをさせていたのにと思ってな」

    司くんの視線の先には、昨日の雨によって大多数がおちてしまった立派な金木犀の木があった。少しだけ寂しそうな瞳をしながら司くんは木の下、オレンジ色の小花の絨毯へ近づき数個片手に拾い上げる。

    「昔は咲希とこうして花びらを持ち帰り、ポプリなんかを作ったんだ」

    上手くいったことは無かったんだがな。拾った金木犀の花に反対の指で触れながら過去を懐かしむ司くんの側に寄り、近くから手のひらの上のオレンジ色の花を覗き込む。

    「……ねぇ、司くん。よければ僕にもそのポプリの作り方を教えてくれないかな」

    「別に構わないぞ。……それにしても少し意外だな。類の方がそういうのには詳しいのだと思っていたが」

    「ふふ、あいにくと僕は機械なんかには詳しいけれどそういったものに関しては疎くてね。ぜひとも教えてほしいんだ」

    それに……と、花を乗せた手を包み込むようにしながら前に回り込んで司くんと目を合わせる。先程、手の上の花を見たときにほんの一瞬だけ、司くんの濃い蜂蜜色の瞳に不安の色が過ぎたことを僕は見逃さなかった。

    「僕は司くんの過ごしてきた日々を知りたいし、感じたいんだよ。今までの楽しかったこと辛かったこと何でも構わない、君の事がもっと知りたいんだ」

    ダメかい?と上目遣いに司くんにお願いする。もちろん司くんが僕のお願いに弱いことは知っているし、僕のこの顔に弱いことも知っている。使えるものは全て使わないと、逃げるのが上手い司くんにはするりと躱されてしまうから。

    「……そうか。お前も変わったやつだな」

    少しの間の後、司くんが嬉しそうな色をたたえた瞳をたわめて伏せ、僕の手の上から手を重ねる。夕方の、少しだけ冷たくなってきた空気に冷やされた僕の手に熱を分けるように包まれ、僕の心も一緒に暖まる。

    「それはそうと、どうせ作るのならばきちんとしたものを作りたいな!作り方を調べなくては」

    「じゃあ一緒に探そう?準備から全部一緒にしたいな」

    「もちろんだ!最高のものを作るぞ!」


    秋の始まり、少し肌寒い金木犀の木の下で僕らは笑い合った。
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