寝ても起きても酔っても醒めても(降風)「かわいい人ですね」
そう言ってにこにこ頭を撫でる大きな手。
「かわいい。本当にかわいい、です」
にこにこ。なでなで。何が起こっているんだこれは。真っ白になった思考の中、ひたすらその手を受けいれ、目をつぶる。気持ちいい。
「ふふ。いい子ですね。いい子。がんばりやさん。かわいい」
背中がむずむずして、居心地が悪い。それなのにこのやさしい手と柔らかな手から離れられない。この手がずっと僕のものだったらいいなあと蕩けた思考の中、ぼんやり思う。
「こんなにかわいくてがんばりやさんないい子なん だから、あなたは幸せにならなきゃいけないんですよ。もっと、もーっと。世界でいちばん」
なでなで。にこにこ。その手にそっと擦り寄る。もっと。声に出さない願いが届いたのか、その手の主がやわらかに囁く。そうか。僕は幸せにならなければならないのか。そうか。だったら。
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