早く寝かしつけてください、そういって私の手を取ったミスラはその瞬間弾かれたように手を離した。特に私には何も感じなかったがもしかして。
「? 静電気ですか?」
「ッ……そんなことよりあなた、……死んでるんですか?」
なかなか見ない焦った顔をしている。まるで、死んでほしくないみたいな、そういうふうに思ってしまう。
そう思っているうちにがし、と両肩を掴まれて胸にミスラの耳が当てられる。赤い髪が首に触れてくすぐったいし、胸がふにゅりと潰れる感触がしたが、本人はそれどころではなさそうだ。
「……うごいてますね……」
「生きてますよ。話してるし、動いてるじゃないですか」
「じゃあ手だけ死んでますよ」
すい、とミスラが私の手を掬い上げる。暖かい手だ。じんわりと温度が染み入る。ああなるほど。
「大丈夫ですよ、冬はだいたいこうですから」
「は? 大丈夫なわけないでしょう。あなたすぐ死ぬんですから、手から死んだらどうするんです」
自身の温度を移すように指を絡めて握られて、魔法舎の中へ強めの力で連れ込まれる。手は冷たいままだったが、心臓はいつもより多めの温度を体に運んでいく音がした。