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    もけけ

    @m0kekepurin

    ミス晶♀書いてる生き物。すけべなのもときどきおく

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    もけけ

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    厄災戦後。帰れなかった晶ちゃんが喫茶店を開いて、そこに入りびたる番猫の話。導入

    #まほやく男女CP
    Mahoyaku BG CP
    #ミス晶ちゃん
    missAkira.
    #ミス晶
    mis-crystal
    ##喫茶赤猫

    からん、と涼し気な音がなる。それを聞いたカウンターの内側の女性がにこりと微笑みを作った。
    「いらっしゃいませ。一名様ですか?」

     中央の国の城下とは言えない外れのほう。郊外とまではいかないが人通りはいくらか落ち着いた通りにその店はある。通りに平行に設えられた階段を少し下ったところに入り口の扉があり、1階の窓が上の3分の1だけ地上に出ているような不思議な建物の1階がそれだ。
     どうやら他に従業員もいないため店主であろう可愛らしい女性にお好きな席をどうぞ、と言われ、窓際の席へ。目の前に先ほど下った階段と、少し視線をあげれば通りを行きかう人の足だけが見える。
     店内には他に数人客がおり、穴場の店なのかもしれないと思い至った。紅茶を注文しがてらそっと店内を見回した。テーブル席に若い女性が二人、カウンター席に高齢の品の良さそうな男性が一人。そして。
     異様に目を惹く赤い髪の若い男が一人、カウンター席の端にいた。なぜ目を惹くかといえばその髪もそうだが、カウンター席にもかかわらず、突っ伏して熟睡しているからであった。常連なのだろうか。
     あまりに不躾に見てしまい、いつの間にか店主が紅茶を持ってきてテーブルに置くときに苦笑い気味に言う。
    「よく寝てますよね。普段不眠症なので大目にみてあげてください」
     その口ぶりから少なくとも友人以上であることは伺えた。その砕けた口調が少し嬉しくて、いい天気ですからね、とか少し浮かれた返事をへらりと笑ってする。微笑みだけを返してくれた店主がカウンターに戻っていくのを目で追って、そして背筋が凍った。
     つい10秒前まで眠っていたはずのカウンターの男が、姿勢はそのままに目が開けていた。感情の読めない緑の瞳がこちらをじい、と見ている。ゆっくりと瞬きをして、そして男は体をのそりと起こした。今気がついたがその顔はとても整っている。
     店主が流しで何か作業をしながら目の前の男に声をかける。
    「あれ、もう起きたんですか? うるさかったですか?」
    「いえ別に。喉が渇きました」
    「水ですか? お茶にしましょうか?」
    「水でいいです」
     店主はグラスを取り出して、冷蔵庫のミネラルウォーターを注いで男に渡した。男は一瞬でそれを飲み干し、立ち上がりがてらグラスを返す。
    「出かけます」
    「わかりました、気を付けて」
    「誰に言ってるんです。まあ、悪い気はしませんけど」
     思っていたより数段背の高い男は椅子に掛けてあった白い外套を羽織ると手ぶらのまま店を出て行った。当然のように金は払っていない。その背を気づかわし気に見る店主。なにより男の、自分に向けるのとは桁違いに柔らかい視線。それらから多くを察した。
     会計の際に硬貨を渡しながら店主に聞いてみた。
    「あの人、ご主人なんですか?」
    「へ?」
    「あの、えっと赤い髪の……」
    「ああ、ミスラですね。いえ、うーん、えっと……と、友達?」
     そうかどうかすら怪しい、といった顔で、切なさも恋しさも全く読み取れない顔色で店主はそういった。驚愕した。今後ほぼ確実に友達ではなくなると思われた。経過も気になるし、単純にこの店が気に入ったので常連になることが決まった日だった。
     ところでミスラってどこかで聞いた事がある気がする。


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