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    t_imukan

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    ルシ伊小話 身体が、恋情で煮えたぎっている。顔に添えられている手が少し冷たくて、自分自身の昂りを自覚する。意地悪げに細められた赤い目が、私を全身を貫く。こちらの全てを引き出してくる彼の視線から逃げるようにぎゅっと目を瞑れば、瞼に甘く優しい口づけが落とされた。
    「おい、目を背けるな。今、おまえの前にいるのは誰だと思っている?」
     かけられた声にそろりと目を開けると、どろりと溶けた瞳が目の前に飛び込んでくる。「いい子だ」と言いながら頭を撫でてくるものだから、擽ったい気持ちでいっぱいになった。ふふ、と思わず笑みが溢れる。
    「随分と余裕そうだな」
     余裕? 余裕なんてあるわけない。ルシファーの前で涼しい顔をして過ごせるものか。抗議の念を込めてルシファーのことを見つめれば、彼はあやすように私の頬を、瞼を、額を啄んでくる。
    「フ…、そうむくれるな。悪かったよ」
     最後に唇に触れるだけのキスが落とされた。あれ、このキスの続きはないのかな。ほんの少し疑問に思って再びルシファーの様子を伺えば、彼は口角をそれはそれは楽しげに吊り上げていた。あ、これはしてやられたかも。
    「どうした? 何か、して欲しいことでも?」
     ああ、やっぱり。今日のルシファーはいつもよりもいじわるだ。私に全部言わせるつもりらしい。軽々と私を膝の上に載せた後、背中をゆっくりと撫でるその手つきは、ただただこちらの温度を上げるだけだった。胸を突き上げた己の気持ちを彼の前に曝け出す。
    「………もっと、欲しい」
    「何を?」
     この悪魔! 思わず顔を顰めたところで効果はなかった。彼は、瞳孔を細めながらニヤリと笑って動こうとしない。何もかも見透かしているとでもいうのだろうか。こちらの言葉を待っているらしい。
     それでも、ルシファーの手のひらの上で転がされっぱなし、というのも面白くない。彼の頭に手を添えて、端正な唇にそっと触れてみる。誘うように彼の唇を舌でなぞる。
     ルシファーはほんの少し目を見開いた後、舌を遠慮なく割り入れてきた。彼の舌が絡みついて、思わず息が漏れる。口の中を弄り、丁寧に歯列をなぞり、上顎をつつかれてはもうおしまい。身体の奥深くで封をしていたはずの欲望が、どんどんと口をついて漏れ出している。甘い声が鼻を抜けていくのがわかった。
     ああ、唇が離れていく。彼の手は冷たいと思っていたけれど、頭に添えられている掌はとても熱かった。おでこをコツンと合わせ、ルシファーは私に胸が焼けるような甘さを湛えた声でこう囁く。
    「おまえの全てを俺に見せろ」
    「……傲慢だ」
    「何を今さら。この俺が何を司っているのか忘れたか?」
    「ふふふ、それもそうだね」
     戯れのような会話をしながら彼の首に手を回した。それに応えるようにルシファーは私のことをしっかりと抱き寄せた。こうして今日も、私たちの夜は更けていく。
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