初夏の誘い いかにも初夏だと言わんばかりの青空と空気の匂い。ジリジリと照り付ける太陽の威力が強くてほんの少し汗ばむ季節。
魔界とは打って変わって人間界は明るい、と思う。目に映る全てが夏らしい眩しさをたたえて輝いていた。
ベンチに腰掛けて、ぼんやりと街並みを眺めみる。人々の会話や、車の往来の音が合わさって、ひとつの街を作り上げている。人間界ならどこにでもあるような都会の風景。ただ、ひとりの悪魔を除いては。
「ほら、買ってきたぞ」
「ありがとう、ルシファー」
片手にアイスティーを携えて、ルシファーがこちらへと歩いてくる。
それにしても、ただ歩いているだけなのに嫌味なくらいに格好良い悪魔だ。魔界で見慣れた私服とはまた違う、隙のないスーツに身を包んでいる。様になっているしとても似合っている。
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