それを選んだのは、単に唇に触れるための口実だった。
口に含んだ液体を勇者の口に流し込む。飲み下したのを確かめてもジャミはしばらく唇を貪るのをやめなかった。震え、息を乱しながらも、アステルは抵抗しない。
けれどそれは毒でもなんでもない、ごく軽いアルコールだった。薬草を漬け込んであるので確かに味は奇妙だが、言ったような効果はない。
だからアステルが、本当に来たくないと思っているのなら、振り切ることは容易いのだ。毒のせい、逆らえないと言い訳し、己の意志で彼のもとへ来ている。
「んっ……っ、はぁっ……」
彼に肌を許すのも彼女の意思。彼の舌を素直に受け入れることに満足し、舐める以上のことは勘弁してやっている。
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