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    aonekoya_tama

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    aonekoya_tama

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    バレンタインの銀博。
    危機契約とバレンタインとお誕生日様と夜の危機契約がやってきてネタが渋滞しているロドスの話。

    危機契約に湧いているロドス・アイランド製薬 PM 9:00
     オペレーター居住区に艦内放送が流れた。
    「おはようございます。ロドス・アイランド製薬より艦内の皆様にご注意を申し上げます。
    エーシェンツの約10%はカカオアレルギーを持っています。お召し上がりの前に必ず成分と体質のご確認をお願いいたします。
    また、ロドス購買部ではカカオ未使用のチョコレート風味食品も多数扱っていますので、そちらも併せてご利用ください」
     繰り返します、と続く放送をドクターは頭を抱えながら聞いた。
    「くたばれ2月14日……!」
     この放送は一週間くらい前から毎日流しておくべきだった。そして厨房からハイビスを遠ざけておくべきだった。
     全ては後の祭りだ。
     危機契約の真っ最中だというのに、ペッローとフェリーンを中心に体調不良者が続出し、ドクターは作戦の変更を余儀なくされている。
     今日の日のためにスキル特化したオペレーターが戦線にだせないのはとても辛い。
     契約内容とオペレーターの一覧を見比べながら、ドクター自身は朝の食堂で可愛いアーミヤにいただいたチョコレート菓子をもりもり食べている。
     唸っていると執務室の扉が開き、長身のフェリーンが悠然と入ってきた。
    「変わりはないか? 我が盟友よ」
    「い、いたーーー!!! 特化3済の無事なフェリーン!!」
     ドクターにしては高機動で分厚い胸板に抱きついた。
     一拍、目をしばたたかせたシルバーアッシュは、ぎゅうっとドクターを抱きしめた。
    「私の助力が必要か?」
    「是非にも助太刀いただきたい!」
     チョコレートもかくやという声で囁かれているというのに、切羽詰まったドクターはさっぱり察さなかった。
     

     体調不良の者が多いと聞いてシルバーアッシュが選んだ契約は「少数精鋭Ⅲ」
     4名の精鋭による戦術。そこに通過兵の強化と峻厳地形を追加する。
    「強気」
    「お前とて最適解だとわかっているだろう?」
    「シミュレーションを何度も繰り返すことになるぞ」
    「付き合うとも」
     メンバーの選抜、シルバーアッシュの指名はアンジェリーナ。
     ドクターはそれにソーンズとシャイニングを加える。
    「こちらだ、盟友」
     顎に手をあてて考え込んでいたシルバーアッシュはエイヤフィヤトラとサリアに変更した。
    「医療OPいないんですけど。いくらサリアがいたって、君んとこまでは手が回んないぞ」
    「彼女のダブルワークの力が借りられれば十分だ」
     シルバーアッシュはそう言いながら、さらに契約を追加した。
     背水の陣だ。1兵たりとも、逃すつもりは、ない。
     うつくしい瞳に物騒な光が増し、あとはお前の指揮力に期待している、と鼻先をつつかれながら睦言でも吐いているように微笑まれ、ドクターは、引きつった笑みを浮かべた。


     本当に、ダブルワークだけで戦線を維持しきっちゃった。
     作戦完了の表示を見ながら、ドクターは戻ってくるオペレーターを出迎えた。
     サリアの肩を叩き、アンジェリーナとハグして、エイヤフィヤトラとハイタッチ。
     そして、しなやかな尾を揺らしながらやってくるシルバーアッシュを、ポケットに手を入れたまま、上目で見上げる。
     1ルートを封じきり、幾度か真銀斬を放った。全身に重苦しい疲労を抱えているだろうに、目元には高揚の朱に染まっている。
     シルバーアッシュの問うような目線に、ドクターは顎先と口角、片手を上げる。
    「最高」
     打ち鳴らすお互いの手のひらの音が黄鉄の峡谷に響いた。


     ロドスに帰還し、シャワーを浴び、食事を済ませたシルバーアッシュの私室にドクターが訪ねてきた。
    「やあ。昼間はどうも」
     ドクターの髪からシャボンの匂いを嗅ぎ取ったシルバーアッシュは目を細めてドクターを招き入れる。
     後ろ手に私室のロックがかかっていることを確認し、ドクターをソファへ座らせる。
     そう広くもない部屋だから、と一人がけのソファしか置かなかったのは、こういうときにドクターをお膝に乗せるためである。
    「君たちはチョコレートが食べれるフェリーンでお間違いないですか?」
     膝に乗せるとドクターがちょっとしおらしくなって面白いので。
    「ああ、間違いない。お前から頂戴できるのを、心待ちにしていたぞ」
    「ハードルあげんな。なんと手作りよ」
     そう言ってドクターは、ポケットからロリポップのような形をしたチョコレートを取り出した。
    「これを、お前が作ったのか?」
    「ううん。作るのはこれから。コンロ借りるよ」
     部屋に備え付けられてる小さな電子コンロにドクターはミルクパンをのせた。
     何でも入っているポケットから小さなパックに入ったミルクも出てくる。
     シルバーアッシュはミルクを暖めているドクターを背中から抱きしめた。
    「アーミヤから手作りチョコレートを貰ったんだよ。すっごく嬉しかったから、私もチョコレートが手作りしたいって言ったんだけど、アズリウスに勧められたのはこれだった」
    「忙しいと思われていたのだろう?」
    「ぶきっちょだと思われてる疑惑のほうが強いんだよなあ。これでも本業は研究者だし、実験器具を扱うも手順通りに混ぜ合わせるのも得意なんだけど」
    「実験とお菓子作りを同列に扱うからだ」
    「似たようなもんじゃんか」
     唇を尖らせて見せるので、おとがいを掬い上げ、それを吸う。
    「こら、手作りさせてくれよ」
    「ミルクがあたたまるまでだ。手持ち無沙汰だろう?」
     ならいいか、と許したのが失敗だった。
     出力の弱い電子コンロではカップいっぱいのミルクを温めるのさえ時間がかかるのだ。
     チョコレートをミルクに溶かそうとするころには、ドクターがさきに蕩かされている。
     沸騰したミルクにコンロを止めたのはシルバーアッシュだし、カップに移したのもシルバーアッシュだ。
     ドクターは、息を整えながら大きな手が支えるカップにチョコレートを浸けて、くるくるとかき混ぜる。
     白かった表面はマーブルを描きながら徐々に染まっていく。それがなんだかこのあとの自分のように思えて、片手で額を覆った。
    「夜の危機契約、3等級くらいで勘弁してくんない? 明日もあるから」
    「3等級だとなにができる?」
    「しゃぶって扱いてキスしてやるよ」
    「お前には、キスしかできない?」
     眉を下げて見せたシルバーアッシュの殊勝な顔にぐらっときたが、これはこの男の手管である。ほだされてはならんやつだ。
    「おわかりいただけてなにより」
     ほら、できたよ、と言ってチョコレートの溶けたカップを差し出すと、ドクターの手ごと受け取ったシルバーアッシュが吐息を吹きかける。
     指をくすぐる湯気と吐息にむずむずする。
     やがてシルバーアッシュはゆっくりホットチョコレートを口に含んだ。
     あまい、と唇を舐める仕草だけで指先がピリピリと痺れる。
     ドクターを抱き込んだまま、シルバーアッシュは時間をかけて暖かく甘いミルクを飲み干し、ありがとう、と鼻先をすり寄せる。
    「チョコレート風味食品ではないんだな」
    「うん。本物のほうが美味しいってきいたし、君は大丈夫なほうだろ?」
    「ああ。美味しかった。だが、なぜ、中毒者も出るような食品が今日の贈り物に選ばれているのかは知っているか?」
    「極東の製菓会社の陰謀だって聞いたぜ。うちもクロージャがウハウハしてたし」
     それもそうだが、と言ってシルバーアッシュは空になったカップを置いて、ドクターを抱き上げる。
    「うわっ、な、なに!?」
    「テオブロミンがチョコレートに含まれているからだ」
     足休めの拠点はベッドまでが近くてよい。
     医療従事者の端くれであるドクターもその興奮物質は知っている。
    「詭弁にも程があるぞシルバーアッシュ! たかがいっぱいのホットチョコレートにそんな効果が期待できるものか!」
    「私はな。しかし、お前は朝から、どれだけチョコレートを食べた?」
     ベッドに寝かされたドクターが呆然とシルバーアッシュを見上げる。
     その顔には「いっぱい食べました」と書いてある。
    「今日のお前の指揮は冴えていた。チョコレートの支援契約はよく効いたな」
    「夜の危機契約には無効だろうよ!」
    「試してみよう」
    「いいか、シルバーアッシュ、3等級、3等級だからな! そんなに私が冴えているというのなら、パンツを脱ぐべきは君の方だ!」
    「私もお前にキスができるだずだ」
    「私の口はここ! ここだシルバーアッシュ!」
     わめくドクターの口をシルバーアッシュはかぷりとやった。ついでに下肢の布もベッドの下へ放り投げる。
    「どこにキスをするかは、決まっていないな?」
    「パンツの中は想定してない!」
     コートの裾を握って足の間を隠すドクターにシルバーアッシュは頬をすり寄せる。
    「明日は、私の誕生日だ」
    「は?」
    「誰の贈り物をもらうより、一番にお前との夜が欲しい」
    「私だって君の誕生日プレゼントは用意してるんだよ」
    「それは嬉しいことだ。しかし」
     シルバーアッシュはコートを握るドクターの手をいとも簡単に引き剥がし、シーツに縫い止めた。
    「あまり抵抗してくれるな。逆効果だ」
     見下ろしてくる目が据わってる。
     ドクターは、観念して目を閉じた。
    「あんまいっぱいするなら、誕生日の君を働かせるからな……」
    「それくらいで「いっぱい」できるなら、いつでも手を貸そう」
    「前言撤回で。明日の私が使い物になる程度でお願いします」
     今日の君の働きに足りない分があったら、後払い分割式がいいなあ、とドクターはぼやく。
     シルバーアッシュはご機嫌に喉を鳴らした。
    「リボルビング払いにも対応しよう。末永く、取り立ててやる」
    「アッこれ高利貸しの手管か?!」
     ドクターが気づいた時には、シルバーアッシュがにんまりと笑っていた。
     
    END
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