俺は真田さんが好きだ。
詳しく言うと、真田さんと飯を食うのが特に好きだ。
真田さんは今、難しい顔をしてスパゲティを巻いている。
今日の昼ごはんはナポリタンで、ピーマンの緑がオレンジに映えていた。
「もう春っすね〜」
花粉症のニュースがやっていたことを思い出し、そう呟くと数秒遅れて真田さんはこちらを向く。
「む」
「だから、もう春ですね、って」
「ああ、そうだな。梅はもう咲いたはずだ。」
「へェ〜そうなんだ」
向かいの手元ではスパゲティが巻かれすぎてどんどん大きくなっている。真田さんはフォークを抜いて、皿の隅っこでまたスパゲティを巻き始めた。
真田さんはこれが下手くそだった。
俺の皿にはもう少しの麺と、玉ねぎとピーマンが絡まって残っているのみだ。
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