おきいこ♀「カノジョいたよね」
開口一番、隣の席に座るクラスメイトに聞かれ、隠岐は目を白黒させた。話題を振られるにしても急すぎて、どう答えたものかと考える。
「コレあげる」
「なにこれ」
隠岐はクラスメイトから差し出された小さな透明の袋を受け取り、中に入っているものを確認する。楕円を伸ばしたような形のものが二つ入っていた。裏返すと小さな文字で『爪磨き』と書かれていて、隠岐は不思議そうにクラスメイトへ視線を向ける。
「試供品で貰いものなんだけど必要ないからカノジョさんにどーぞってこと」
「これヤスリ?ぺらぺらやん」
「ちょっと違う、表面ピカピカにできるやつ」
ぺらんぺらんと袋をうちわのように振ると、クラスメイトが呆れたように自分の爪を隠岐へと見せてきた。光を反射するぐらい磨かれ綺麗に整えられた爪を見て、隠岐が「たしかにそんなピカピカやったら試供品はいらんやろなぁ」と呟く。
「いらないならいらないでいーからさ」
「まぁ貰えるもんは貰うって人やから喜ぶと思うけど」
隠岐の脳裏に感嘆の声をあげ素直に喜ぶ姿が浮かぶ。おそらく何をあげても喜ぶだろう。
「けど?」
隠岐はとじられた袋の糊を剥がし、中身を取り出した。不思議そうなクラスメイトに向き直り、隠岐は手に持った『爪磨き』を振った。
「どうせならおれがやってあげたい。から、やり方教えて」
□□□
生駒が個人ランク戦を終えて隊室に帰ってくると、部屋には後輩兼隊員兼恋人の隠岐が一人で座っていた。何をするでもなく座っている姿に生駒は首を傾げる。
「どないしたん」
「イコさんのこと待ってました」
「なんで?……あれ?今日、約束した日やっけ?」
自身のスマートフォンを取り出し予定を確認しようとする生駒に、隠岐は緩く首を振って否定した。
「それは明後日です。イコさん、ココ、ココに座ってください」
すぐ横の椅子を指し示され、生駒は素直に腰を下ろす。正面同士、向かい合うように座り何をするのかと聞こうと口を開きかけた時だった。隠岐が生駒の指先を握った。
「換装、解いてください」
「……ウン」
言われるがまま、換装体から生身の体へと戻る。指先からじんわりと隠岐の体温が伝わり、ほんの少し生駒は手を引いた。肌同士がわずかにこすれ合う。
「クラスの子にね」
抜けかけた手を追いかけるように指先を握りなおされる。隠岐の親指の腹が生駒の指の背を辿り、爪を労わるような動きで撫でた。
「爪、ピカピカにするやつもろたんですよ」
生え際から爪の先を確認するように撫でられ、生駒の背中が反っていく。
「う」
「イコさんにしたいなぁおもて、いいですか?」
「ん」
このあと、爪短い深爪気味やしっていういこさんを宥めつつ爪の表面ぴかぴかにする隠岐
「なんやピカピカしとる。きれいやな…ありがとうなあ、クラスの子にも言うといて」
自分の爪みながら感心してるいこさんと、無防備に手を任されてる感にグッときちゃった隠岐
あと爪見て感心してるいこさんをかわいいと思った隠岐、後日クラスメイトにいろいろケアの仕方とか聞いて色々するようになるおとこ、隠岐