陰陽師×妖狐出久は妖狐である。まだ何の力も無いイズクという子狐の頃に人を救けんとその身を賭して命を落とした。それを見た引子という巫女が八木の神に祈ったことで畜生である魂を掬われ、神域で修行をしてから力を与えられた。以降は西へ東へと昼夜を問わず人の為、妖の為、霊魂の為に駆けずり回っている。
だから陰陽師に目をつけられる悪行は記憶にない。それも爆豪─激しい火を操る豪傑─の二つ名の者に。
「…………」
自分の四肢を大の字で地面に捕縛した陰陽師は黙ったまま何も言わない。出久も口を閉じて様子を伺うことにしたが、彼は一向に話そうとしない。出久は気まずさに耐えかねて口を開いた。
「あの、陰陽師さん? 僕何かしましたか?」
「…………お前、名前は」
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