【司えむ】ギャップ萌えというやつ「付き合ってください!」
「ごめんなさい!」
えむが告白されている。とんでもない場面に出くわしてしまった。司は思わず身を潜める。普段は色々うるさいと言われるが流石に黙るべき場面をぶち壊す男ではない。
えむは高校を卒業してから急激にモテ始めた。
人並み外れた身体能力でステージを縦横無尽に飛び回る姿は多くの憧れを集める。
高校時代は年の割に幼い雰囲気からか恋心を向ける男は今ほどではなかったのだが。
実はと言うと司はえむに想いを寄せていた。仲間への友愛が慕情に変わった―自覚したというべきか―瞬間をはっきりと覚えている。
誕生日パーティーでドレスを纏い登場したえむの姿が別人のようだった。
天真爛漫な少女像からは思いもよらない気品。そんな顔もできるのかと。
彼女は自分とお近づきになりたい男たちに笑顔で応対していたが、司は気づいた。
その笑顔に隠れている寂しさを。
財閥令嬢やら舞台女優やらの肩書に惚れられたのだとえむは無意識に見抜いてしまったのだろう。野性的に鋭いところがある。
―オレならそんな顔はさせないのに。
―本当に、そうか?
―高貴な姿もできるのかと惚れてしまったオレが?
司が声をかけるとえむが笑顔で応対してくれる。自惚れかもしれないがこちらに向ける顔の方が好きだ。なんというか自然な気がする。
ずっと笑っていてほしい。できればオレの隣で。
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裏設定メモ
・「10か月後にえむちゃんのドレス見れるんですか!?」という未来に想いを馳せながら書きました
・えむちゃんはいつもより大人な姿を司くんに見てもらって女の子として意識してもらおうとしてた側面もある 作戦成功