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    お馬鹿なドタバタ司えむと類寧々
    唐突に浮かんだのでメモでポイ
    この司くんはえむちゃんの気持ちに気付いてる。オチも続きもない

    #司えむ
    administer
    #類寧々
    ruinene

    男前とヘタレと勘違い「寧々のこと…どう思う?」

    目を伏せて、類をよく知らない人には分からないだろうほど少しだけ頬を染めて言うその男に、全てを察した。
    いや、わかってはいた。なんとなく気付いてはいた。
    オレにも好きな人がいるから、同じような視線を送るこの男の気持ちに気付かぬほどオレは鈍感ではない。本人は保護者面をすることで隠しているつもりだったのだろうが。
    そんな男がついに、ついに相談を。
    感極まって目に涙が浮かびあがるのと詳細を問い詰めたくなる気持ちを必死に抑え、頭をフル回転させる。
    やっと打ち明けようとしているこの大事な仲間であり友を応援をする以外にやることなどないが、この言い方ならおそらく、オレが寧々に好意を抱いていないかの確認を先にしたいのだろう。
    ならば、その意を汲み誘導してやろうではないか。

    「うむ。素晴らしい人間だと思っているぞ。明確な夢を持ち、人見知りなのに人前に立とうと努力する姿も健気で逞しく尊敬に値する。
    だが安心しろ。オレは寧々のことは恋愛対象としては見てな」
    「寧々のことを女性として見られないと言うのかい!?」

    …は?

    「寧々のような愛らしく美しい姿から発せられる清らかな歌声、人見知りなのに自分の歌を聴いて欲しいと思う相対した心、不安になりながらも前に突き進み見せてくれる輝き、その裏の家やこの場所での並々ならぬ努力、体力バカに囲まれたこのワンダーランズ×ショウタイムの面々に置いていかれまいと必死に食らいつこうとする意志の強さ、優しげな雰囲気に眩しいほど輝く舞台上の姿に惹かれないわけないじゃないか!!」
    「るい、類、おちつけ」

    言葉を遮る時間すら与えず食いかかり、オレの首を締めんばかりに胸ぐらを掴んでくる男に、目を白黒させてしまう。
    言い方を間違えたか?…そんなことはないはずだ。だが実際こうならば、他に言い方があった…?
    いや、この様子じゃ、何をどう言っても今のような勘違い、またはオレも寧々が好きだと勘違いされたかのどちらかだろう。
    …後者じゃないだけ、まだマシか。

    「好きなんだ!どうしようもなく!
    …でも、だめなんだよ。僕は、関係を変えるのが怖い。否定されるのが、怖い。それに僕は、世界に羽ばたこうとするその足枷となってしまうかもしれない。それは絶対に、嫌だ。」
    「類…」

    あぁ、恐怖。その気持ちも、わかるな。
    だが…

    「大丈夫だ!お前は素晴らしい才能を持つ天才演出家!足枷になるなんてことはないし、問題があるならば共に考えればいい!まずは、自信を持て!!」

    胸ぐらを掴んだままの腕に手を添える。
    あやすように軽く叩けば、強張っていたそれと表情が少しずつ和らいでいった。

    「司くん…」

    落ち着いてきたその様子にふっと息を吐いた瞬間、カシャンと何が落ちる音。
    音の出どころを追えば、そこには青ざめる寧々、視線を泳がせるえむの姿があった。
    何かに狼狽え、ショックに手から何かを落としたようだが、何かあったのだろうか。

    「類…司のこと、好きだったんだ…」
    「…へ?」
    「司くんも…類くんを、選んだんだね…」
    「は?」

    2人に声をかけようと口を開いた時、震える小さな声が鼓膜を揺する。

    「だってそんな、類の熱烈な告白に、司のそれは…そういうことなんでしょ?」

    痙攣するかのように揺れる指先が、俺たちを指す。

    それは、オレの添えた手。
    そして、今の「類の熱烈な告白」、これは寧々に対するものだったが…

    何を言っているのか理解するのには、数秒を要した。

    「…!ち、ちが…」

    確かに思い返せば、類が「好きだ」と言い始めてから、「誰に対する気持ち」かは言葉にしていない。
    もし、最初からでなく、類が「好きなんだ!」と言い始めた以降の言葉を聞いていたとしたなら、類が恋愛感情を向け、告白している相手はオレだと勘違いしないでも…ないのか?そうなのか?本当に?

    「うん、大丈夫…別に、そういうの…、だって、今の時代はノーマライゼーション…」

    まずい。寧々が壊れてきた。
    「ノーマライゼーション」の意味もはき違えている。それを言いたいのなら「ジェンダーレス」だ。
    想定していない事態とショックに頭が追いついていないんだろう。えむの頭からは湯気のようなものが出始めている。
    だめだ、これ、完全に勘違いしている。
    類も類とて、思考放棄しかけているようで放心中だ。おい、お前がきっかけだぞ。責任を取れ。諦めるな。

    …兎にも角にも、このままでは全てがこんがらがって大変なことになる。いや、既になっているから一刻も早くどうにかせねばならん。
    類のためにも、オレのためにも。

    「ちがーーーーーーう!!!!!」

    オレは心の底からの叫びをそのまま声に乗せ、未だ掴みかかる類の手を弾き落とし、寧々方向に向かって思い切り背中を押す。

    そっちはそっちでやってくれ。早く告ればいいんだ。側から見ていればお前らが互いに想い合っていることくらいすぐにわかる。臆する必要なんて何一つないのだから。

    オレはオレで、やることがある。
    ギュンと音がする勢いでそちらを向けば、びくりと肩を揺らし、自分が見られているのかとキョロキョロしたあと、慌てて逃げようとする小さな姿を追いかける。
    少々もたついた彼女を捕まえることなど動作も無く、握った小さな手を引き寄せれば大きな瞳がオレを向く。

    …あぁ、類。すまないな。さっきの言葉の一部は撤回しよう。
    たとえ明確な勝利が見えていたとしても、いざ本人を前にその言葉を発しようとするとこんなにも緊張するなんて知らなかった。
    お前は幼い頃から一緒にいた相手だから尚更恐怖が勝るのだろう。
    この先の関係性が崩れてしまうのでは、と足が、手が震えてしまって先に進めなかったんだな。
    現に今、えむの両手を握りしめるオレの手は小さく小刻みに震えている。未来のスターたるこのオレが。笑ってしまうな。

    …だけど、オレは。

    先に行くぞ、類。
    すぅ、と大きく息を吸い、心と腹の奥底から気持ちを声に。

    「好きだーーーーーーー!!!えむーーーー!!!!」

    普段から声が大きいと言われるオレが、自覚したうえで地響きするほど大きな声でえむに向かって叫ぶ。
    目の前にいるんだから叫ぶ必要なんて、と寧々なら言うだろうが、このオレの気持ちはこんな声の大きさだってまだまだ伝わらない。

    「……………ふぇっ!!?!?」
    「オレが好きなのはえむ、お前だ!!類や寧々ももちろん好きだが、違う!
    お前への気持ちは…愛だ!愛してるんだ!!!えむ!!!!」

    またも「ふぇえっ!」と不思議な声を発し狼狽えるえむを可愛らしいと思うのは重症だろうか。
    いいや、これが「恋愛感情」というものだ。きっと。オレにとってはそうだから、そうなんだ。それ以外にありはしない。
    ぼぼぼぼと蒸気を発しているかのように真っ赤に染まって目をぐるぐる回しふらふらするえむを抱き抱える。
    怒涛の出来事に、今のえむには思考整理の時間が必要だろう。自覚はある。オレとてこんな急に告白するつもりなどなかったんだ。でもまぁ、いずれする予定だったのだから問題はない。即決断即行動、柔軟な対応だ。さすがはオレ。

    次はお前の番だぞ、類。
    このオレが物理的にも精神的にも背中を押してやったんだ。安心しろ。全力でいけ。

    そんな意味を込めて類を見れば、ハッとした直後にゆっくりと寧々に向き直る。
    …もう大丈夫だな。
    そう確信したオレはえむを連れて2人から離れていく。弁解と、積もる話もあるだろうからな。

    「世界に羽ばたこうとする足枷に」、類は言った。
    この先えむと共に歩むのならば、オレとえむの夢、どちらも諦めず追っていくならば、いつか必ず類と同じように考える日が来るだろう。
    だけどそれは、オレや類、1人で考える問題じゃない。
    共に歩む相手と共に考えるべきことのはずだから。

    後ろの2人、そしてオレたち2人に、互いが納得してを取り合えた上での幸せな未来があらんこと。



    オレの120dB(ネネロボ測定)を超えた声量のおかげで、鳳家御令嬢との交際がフェニラン関係者ほぼ全てにバレてバイトに行くたび温かな視線を向けられるようになったこと、無事気持ちを打ち明け交際が決まり、嬉しさと興奮からしばらく寧々を必要以上に褒めまくる類に少々手を焼くことになるのは、また別の話である。
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