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    禍話リライト

    あまやどり雨が酷いと大変だ。何故なら麻痺をしてしまうから。

    三日から四日ほど、嵐が続いていた。自分は一人暮らしでマンションに住んでいる。こうも嵐が続くと、玄関のドアはいつも嵐の風や雨粒などのせいで昼夜問わずガタガタうるさい音を立てる。だから麻痺していた。ドアがガタガタ言うのは当たり前だと麻痺していた。

    今日は仕事が休みのためと外の嵐をかんがみて、家の中でくつろいでいると、友人のAから電話がかかってきた。
    「なあ、今日お前仕事休みだったよな?今仕事の帰りでお前のマンションの前通ったんだけどさ、大丈夫?」
    「え、何が?」自分は何を心配されてるのかが分からなかった。嵐のことでも心配されてるのだろうか。
    Aはこう言う。
    「いやさ、お前の部屋の扉の横に人が立ってるんだよ、立ってると言うより、扉の横の壁にもたれかかってるんだよ。」
    Aが言うには、自分のマンションを通り過ぎる10秒間、その人は微動だにしなかったらしい。Aはそれを訝しみ、自分に電話をかけてきたという訳だ。
    無論、こんな嵐では友達などは呼べないため、外の誰かに心当たりはなかった。
    Aとの電話を終え、自分は念の為チェーンロックをかけながら外の様子を見ることにした。
    隙間から覗くと、そこには知らない女がいた。その女はAの言う通り、扉のすぐ横の壁に背中を預けもたれかかっている。
    普通、真横の扉が開いたら誰でも、せめて視線ぐらいはそっちに向くだろう。しかし、その女は一切こちらを向かず、ただ外の風景を見つめているだけだ。
    思わず、動揺して少し黙ってしまった。数秒間、静寂が走るが、その間でも女は動かない。勇気をだして聞いてみた。
    「なにしてるんですか?」
    それでも女は無表情に嵐を見つめている。しかし、その女はそのまま口を開く。

    「わかりませんか? あまやどりですよ」

    自分はさらに困惑した。雨宿り?そんな訳ない。何故ならここはマンションの三階。雨宿りなら一階ですればいいのに、わざわざ三階に来て、そしてわざわざ自分の部屋の扉の横にまで来たのだ。
    ふと、女の足元を見る。靴下しか履いてなかった。靴を履いていない上に、その靴下は濡れてなかった。外の嵐の中、たとえ靴を履いていたって靴下を一切濡らさないなんて無理だ。
    自分は関わってはいけない人だと感じ、部屋の中へ戻る。
    一時間経ってもまだいるのなら、警察を呼ぶのも考えていた。
    もし、この状況になったら、玄関の扉を意識してしまうのは当たり前かもしれない。

    「 ゴン、ゴン、 」

    扉がそう鳴っている。最初は嵐のせいだと思ったが、その音は聞き慣れてしまった嵐のせいで鳴っている扉の音ではなかった。
    試しにドアスコープを覗いてみる。扉の前に誰かいる。さっきの女か?そう思っていると、その女は、扉に勢いよくもたれかかってくる。ゴン、と音が鳴った。また女は体制を戻す。そしてまた扉にもたれかかってきて、ゴン、と音を鳴らした。その女は、後頭部を扉にぶつけているようだ。
    自分はパニックになり、慌ててAに電話をかける。Aは自分の慌てぶりから状況を察してくれた。
    Aは警察を呼んだ方がいいと言ってくる。このマンションは管理人が在住している訳では無いので管理人を呼んだとしてもすぐに来ないので、仕方ないと思い警察を呼ぶことにした。
    その間でも、その女は扉に頭をぶつけてきている。
    警察に事情を説明し、来てくれるようだ。しかし、警察が到着する頃には女は居なくなっていた。
    警察から事情聴取を受け、全てを話した。
    このフロアの方ですかね?警察がそう聞いてくる。
    ありえない話ではない。もしそうだったら嫌だなぁ。
    その後も事情聴取は続いたが、警察にとっては大きな事件という訳では無いので警察はまた何かあったら呼んでくださいと、帰って行った。

    自分は考えた。このマンションの入り口はエレベーターか外階段しかない。外階段は屋根がないため、濡れずに行くことは不可能だ。そしてエレベーターもびしょ濡れのためどう足掻いても靴下を濡らさずに登ってくるのは無理だった。そうなると、この階層の住人というのが一番有り得る話だった。

    その後、それから何かが起きる訳でもなく、そのマンションで暮らしていたのだが、数日経った頃、マンションの入り口に張り紙がしてあった。内容は自分が住んでいる三階のフロアの、自分が住んでいる部屋以外の部屋をリフォーム工事をするという内容だった。どうやら、三階の部屋で、自分の部屋以外は空き部屋だったらしい。

    結果的に、リフォームはしたものの、三階に自分以外の人が住むことは無かった。

    それ以来、雨が降る日になるとあの出来事を思い出して、緊張してしまう。

    おわり
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