対価と企みふぅ、と疲れを吐き出すような溜息が、ひとりの部屋に響く。
書類仕事をして疲れたのか、眼鏡を一旦外して眉間を揉む。
先程出された紅茶は、時間が経っていたのか冷えてしまっていた。
アズールは、椅子の背もたれに体重を預けて、天井を見上げた。
──対価を払えば、どんな望みでも叶う。
それがこのモストロ・ラウンジの目玉でもある。
だが、その望みは似通った面白みのないものばかり。正直、飽き飽きしていると言っても過言ではない。
何度目かの溜息を吐こうとした時、扉をノックする音がした。
「…はい」
「失礼します、アズール。お客様がお見えです」
入ってきたのは、副寮長であり副支配人でもあるジェイドだった。
その顔はどこか楽しげだ。
「お客様?…依頼者ですか?」
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