Lights in the depths of darkness フーカーをあの地獄から連れ出したのは、喋ることができないのではないかと疑うほど無口な男だった。薬のせいで常にもうろうとしている意識の中で、彼女が覚えているのはこちらを見下ろすいびつな動物の顔だ。彼がフーカーの身体を軽く揺すったとき、彼女は自分が何か言ったような気がしたがはっきりとは覚えていない。彼女の意識はそこで途切れた。
目が覚めた時、知らない天井が見えた。あちこち軋む身体を起こし、周りを見渡すと誰かの家のようだ。安いアパートの一室のように見えるこの場所は、少なくとも、あの地獄ではないことは確かだ。フーカーが寝ていたソファとテーブル、一台の黒い電話くらいしか置かれていないこの部屋はフーカーの記憶にはない場所だった。まずは、ここがどこなのか把握しなければならない。あの獣が悪いやつではないとは限らない。
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