魔族と人間の和解が成立した世界。
魔王城からカイミーン城に出向して勤務をしている魔物がひとりいる。
魔王からも姫からも信頼の厚いその者は、魔王城では『あくましゅうどうし』、カイミーン城では『レオ様』と呼ばれている。
そんな彼の執務室での出来事だ。
彼は、明かりを灯しながら深夜まで書類を処理していた。
コンコン。
なぜか、扉をノックする音が聞こえる。
(こんな遅くに誰が?)
彼はすっくと立ち上がり、扉に手をかける。
ぐっと力を入れて押すと、その隙間に見えるのは甲冑を着た男。
カイミーン城の聖騎士、ミョウジョウだ。
彼は状況をすぐ把握し、笑顔で迎える。
「やぁ、さっき魔王城から戻ってきたのかい?」
「たった今だ。たくさん仕事を持って帰ってきた。手伝いたまえ」
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