marushu_tw☆quiet followDONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題で書いた左寂 #左寂 leftSilence 「センセー、朝メシできてっぞ」 寝室のドアを開けて呼びかけるも、布団にくるまった寂雷からの返事はない。 (無理させすぎたか……いや、先生も煽ってきたし) ドス、と少し荒めにベッドに腰掛けた瞬間、強い力で腕を引っ張られ、左馬刻の体がシーツに沈む。 「起きてたのかよ」 「もう少し……ダメ、かな」 いつもより掠れた低い声で囁く寂雷に、左馬刻は早々に白旗を上げてしまう。 「少しだけ、な」 そのまま2人揃って二度寝してしまい、冷めた朝食を温め直したのは1時間後の事だった。Tap to full screen .Repost is prohibited Let's send reactions! freqpopularsnackothersPayment processing Replies from the creator Follow creator you care about!☆quiet follow marushu_twDONE寂雷先生お誕生日おめでとうございます!TDD解散直後くらいのまだくっついてない左寂いのちのぬくもり病院内の正月飾りが、片付けられていく。 その様子を見ながら寂雷は、年を越せなかった患者の顔を思い出した。さいごまでありがとう、と弱った声帯で絞り出された声を。 (始まりがあれば、終わりがある) 分かっていても、精神を消耗することはある。特に、こんなに寒い日は。 半分開いた廊下の窓を閉めようとした寂雷は、夜空を見てふと、手を伸ばした。 「雪……」 粉雪が一粒、その手のひらに落ちる。血の通わない皮膚と、どちらが冷たかっただろうか。 (ああ、いけない) 沈む思考を断ち切るように、窓をピシャリと閉める。風の音が遠くなり、寂雷は自分に近づいてくる足音に気がついた。知っている音だ。 「お、いた。探したぜ、センセー」 「……左馬刻くん」 863 marushu_twDONEこんな感じの二人ください(https://odaibako.net/gacha/1536)さんのお題で書いた左寂伊弉冉一二三の朝は、案外早い。同居人と共に食べる朝食を用意し、草臥れたスーツを見送ってから洗濯を済ませる。軽い筋トレをこなした後携帯端末をチェックすると、贔屓客から届く沢山のメッセージの中に、行きつけにしている寿司屋の名前があった。手早く、しかし一人一人丁寧に返事をした後、寿司屋のメッセージを開く。 「おっ! これは先生も誘わないと!」 黄金の瞳が煌めき、爪先まで手入れされた指が端末の画面を何度かタップした。鳴ったコール音は三回、いつもより少し遅い。 「先生、おっはようございまーす! ちっと早すぎました?」 『おはよう、一二三くん。丁度いいモーニングコールだったよ』 「つーことは、今日休みっすよね! 昼ご飯決まってなければ、一緒にどうすか? いつもの寿司屋からいいノドグロが入ったって連絡がありまして!」 1037 marushu_twDONEなるべく直接的な表現を使わずにちょっとえっちな左寂小話を書いてみるチャレンジR-15くらいだと思うけど一応閲覧制限つけてます 今年の書き納め! 591 marushu_twDONETDD時代の左寂(1️⃣と🍬は買い出しとか行ってる)『背の高い男性は頭を撫でれば落ちる!』 主(乱数)のいない派手な事務所でキッチンを借り、珈琲を淹れながら左馬刻は、ふと、昨日妹が読んでいた雑誌に踊るフレーズを思い出した。 くだらねーと思いつつその言葉を覚えていたのは、それを見た時、人生で初めて出会った自分より背の高い男の顔が浮かんだからだ。そして今、目の前にその男がいる。 ソファーで長い足を持て余すように組んで、何やら難しそうな本を読んでいるその男とは、神宮寺寂雷。ひとつ結びにされた菫色の髪の毛が、背もたれに垂れて僅かに揺れている。 別に『落とす』気は無いが、穏やかな物腰ながら常に隙のないこの人の頭を撫でてやればどんなリアクションをするのだろうかと、昨日感じた子供のような好奇心がむずむず疼く。本に集中している今がチャンスだと、左馬刻は慣れない忍び足で後ろから近寄った。一房だけ跳ねた髪を避け、その頭頂部に手を翳した、その時。 921 marushu_twDONEマンスリー左寂お題企画(@319_1month)様のお題で書いた左寂です目覚めの一杯は、浅煎りの豆がいい。 拘りのコーヒーを揃いのマグカップに注ぎ、両手に携え寝室に入った左馬刻は、ベッドに腰掛け窓の方を見ている寂雷に、その片方を手渡した。 「ありがとう。……いい天気ですね」 「おー。どっか行くか? 釣りとか」 大きな窓の向こうには、雲一つない青空が広がっている。コーヒーを一口飲んだ寂雷は、既に高い位置まで昇っている太陽の光を遮るように、目の上に手を翳した。 「あまり晴れていると、釣りには向かないんだ。魚が仕掛けを見破ってしまうからね。……それに」 カップを持っていない寂雷の右手が、左馬刻の左手に重なる。寝起きの低い体温と、滑らかな陶磁器のような手触りが、無性に心地いい。 「こんな日に、のんびり家で過ごすのも、いいと思わないないかい?」 369 marushu_twDONEマンスリー左寂お題企画(@319_1month)様のお題で書いた左寂です「お花見に行きたいなあ」 朝食を食べている最中、寂雷が唐突にそんな言葉を溢す。あまりに唐突だったので、左馬刻は眉間の皺を深くして、はあ?と返すしか出来なかった。 「今年はまだ行けてなくてね」 「いや、それ以前に、もうすぐ五月だぞ?もう花見は無理だろ」 葉桜だって遅いだろ、と左馬刻が突っ込めば、そうかな、と呟いた寂雷の視線がすうと流れる。天気予報を見るために点けていたテレビ画面には、『ホッカイドウの桜はもうすぐ満開!』とのテロップと共に、薄ピンクの花が一面に映っていた。つまりは。 「……旅行に行きたいなら、そう言えよ」 「だから言ってるだろう、お花見に行きたいと」 (こーいう所あるよな、センセーは) それが嫌ではないのだから、全く感情というのは不思議なものだ。左馬刻は軽くため息をついて端末を手に取り、「次の休みは?」と聞いた。明後日から、と返した寂雷は、桜に負けない満面の笑みを浮かべている。 449 related works marushu_twDONE推しカプ、イチャイチャしろ(https://odaibako.net/gacha/3737)さんのお題で書いた左寂ピピッ、と乾いた電子音が鳴る。私の手の中の小さな機械を覗きこんで、左馬刻くんがはあ、とため息をついた。 「やっぱりな」 「私としては、いつもより調子が良いと思っていたのだけど」 顔を合わせた途端、「まだ測ってないだろ」と左馬刻くんが差し出してきた体温計の窓には、『37.8℃』と無機質な表示が浮かんでいた。 「よく分かったね左馬刻くん、医者顔負けだ」 そう言うと、左馬刻くんはまた大きくため息を吐いた。 「……先生の事だからな」 それより朝メシ作るから待ってろ、とキッチンに向かった背中を見送り、急に熱っぽさを自覚する。 (…今日は、ゆっくり休もう) ーーこの熱は、暫く冷めそうにないから。 296 marushu_twDONE【左寂】先生受2の企画 #先生と夏休み 参加作品#先生と夏休み来月分の勤務表を見ながら、端末の共有スケジュールを開いた。既に書き込まれている左馬刻くんの予定は×がいくつか。○や△を書き込んでいくうちに、一箇所だけ○が続いて×が無い日程を見つけた。もしかしたら連休を一緒に過ごせるかもしれないな、と思ったところで、端末の画面が着信表示に変わる。耳に当てると機嫌の良さそうな声が響いた。 『よお先生、スケジュール見たぜ。 連休、どっか行きたいとこあるか?』 「そうだね…ヨコハマを、ゆっくり回りたいな。案内してくれるかい?」 そう言うと電話の向こうが少し静かになり、ふっと笑ったような気配がした。 『当然だろ。楽しみにしとけよ』 それから二言三言交わして電話を終え、勤務表をしまうついでに手帳を取り出しカレンダーに印を付けた。 393 marushu_twDONEあ!自カプがかわいい!(https://odaibako.net/gacha/2783)さんのお題で書いた左寂特別、高い声という訳ではない。 機嫌が悪い時やラップバトルの時などはドスの効いた低い声で相手を威圧しているが、普段は穏やかな中音域で懐に入れた者に対しては優しく語りかけることがあるのも知っている。 現に、今しがた聞こえた声は限りなく柔らかい色を持って耳に響いてきた。 「先生」 声がした方を振り返ると、雑踏の中でちらと輝く白銀を見つける。まだ少し距離があるのに、隣で電話をしているサラリーマンや目の前を横切った学生たちの笑い声より、彼の落ち着いた声がクリアに聞こえたのは何故だろう。 「早かったな」 「左馬刻くんこそ」 紅い瞳と目が合い、冷えた体がふわりと暖まる。それだけが、答えだ。 292 marushu_twDONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題から発想を受けて書いた左寂寂雷の家には、様々な飴が入ったピンク色のバスケットがある。 物が少ない家の中で目を引くそれはもちろん家主の趣味ではなく、TDDで集まる際乱数が勝手に持ち込んだ物だ。飴は乱数と衢、時折寂雷と一郎が消費してはまた乱数が勝手に補充をしていたが、今、その中身を減らしているのは寂雷と、以前は手をつけなかった左馬刻だけだ。 TDD解散後も寂雷との付き合いは変わらず……むしろ関係が深くなった左馬刻は、寂雷の家に来るたびに一つ、飴を食べるようになった。 その日も左馬刻は時間が空いたから、と寂雷の家にふらりと立ち寄り「仕事中なので少し待っててもらえますか」と言われ、パソコンに向かう寂雷を眺めつつ適当な飴をバスケットから取って、袋も見ずに一つ、口に入れた。 818 marushu_twDONE献身的な攻めのガチャ(https://odaibako.net/gacha/2729)さんのお題で書いた左寂「…随分惚れ込まれてんだな」 皮肉気に唇の端を歪めた銃兎が鎖骨の辺りを軽く叩く。昨夜つけられた赤い痕が見えたらしい。 …ま、わざとだが。 「俺様が惚れてんだよ」 先生以外に、こんな印(もん)付けられるのを許す俺様じゃねえ。 さらにげんなりとした顔の銃兎に持っていた煙草の箱を取られたが、機嫌がいいので許してやった。 158 marushu_twDONEひとこと台詞ガチャ(https://odaibako.net/gacha/536)さんのお題で書いた左←寂。前に書いた左→寂の先生視点「もう、大丈夫ですよ」 腕の傷口に絆創膏を貼ってそう声をかけると、逞しい手が小さく拳を作り、紅い瞳がすっと逸らされた。少しだけ、胸が疼く。 「礼は言わねえぜ、先生」 「ええ、私がやりたくてやっていることです」 これくらいで大袈裟だ、と言い張る彼を説き伏せ手当てをしたのは何度目だろうか。左馬刻くんは一つため息をついて、立ち上がった。 「…コーヒー、飲むだろ。淹れてやんよ」 礼は言わない、と言いながら毎回美味しいコーヒーを振舞ってくれる不器用な優しさに心が暖かくなる。救急箱を片付けて彼が座っていたソファーに腰掛けると、僅かに香水の匂いが立つ。 とくり、と跳ねた心臓に向き合う勇気は、まだ無かった。 301 marushu_twDONE【左寂】先生受2の企画 #先生と夏休み 参加作品一つ前のとうっっっすら繋がってます#先生と夏休み扇風機の風が風鈴を揺らし、チリンと乾いた音が響いた。先日中華街で購入したそれは和風のこの部屋では少し浮いているが、寂雷は気に入っているらしい。 「処暑も過ぎたのに、暑いね」 そう言いながら寂雷が長い髪を一つに纏める。その項は日焼けを知らない白さで、左馬刻が小さく唾を飲み込んだ。 「そうだ、左馬刻くんの好きなアイス、買ってあるよ」 並んで座っていたソファから寂雷が立ち上がり冷蔵庫に向かう。左馬刻は伸ばそうとした手をそっと下ろした。 「そういえば、線香花火があるんだ。後でやらないかい」 「線香花火か…いかにも夏、だな」 手渡された白い棒アイスを齧る。ソファに座り直して同じようにアイスを食べている寂雷を見て、左馬刻はさっき疼いた腹よりも、もっと深い心の奥底が満たされていくのを感じた。 363 KIZAKIINFOテスト兼お知らせ先生受3に左寂で参加します marushu_twDONEこんな感じの二人ください(https://odaibako.net/gacha/1536)さんのお題で書いた左寂伊弉冉一二三の朝は、案外早い。同居人と共に食べる朝食を用意し、草臥れたスーツを見送ってから洗濯を済ませる。軽い筋トレをこなした後携帯端末をチェックすると、贔屓客から届く沢山のメッセージの中に、行きつけにしている寿司屋の名前があった。手早く、しかし一人一人丁寧に返事をした後、寿司屋のメッセージを開く。 「おっ! これは先生も誘わないと!」 黄金の瞳が煌めき、爪先まで手入れされた指が端末の画面を何度かタップした。鳴ったコール音は三回、いつもより少し遅い。 「先生、おっはようございまーす! ちっと早すぎました?」 『おはよう、一二三くん。丁度いいモーニングコールだったよ』 「つーことは、今日休みっすよね! 昼ご飯決まってなければ、一緒にどうすか? いつもの寿司屋からいいノドグロが入ったって連絡がありまして!」 1037 recommended works marushu_twDONE強い受けガチャ(https://odaibako.net/gacha/1260)さんのお題で書いた左→寂この人の手当を受けるのは何度目だろうか。 消毒液の染み込んだコットンが腕の小さな傷を撫でる。なるべく痛みがないように配慮されている丁寧な手つきは、言葉よりも雄弁に「心配」を伝えてくるから、最近は痛みよりもくすぐったさを感じるようになってしまった。 「もう、大丈夫ですよ」 少し体温の低い指が絆創膏を貼る。離れていくその手を取りそうになったが、拳を握りぐっと堪える。 (この“先生”は、誰にでもこうだ) 千手観音の腕を一本手に入れたところで、何の意味もない。 229 marushu_twDONE簓目線の左寂。えーあーるびーのイベストネタ。--『黒曜石の髪飾り』を手に入れました-- モンスターをやっつけてすぐ、視界の端にそんなメッセージが浮かび上がった。剣をなおした左馬刻が手を出すと、手袋の上に黒い石が2つ。 「アイテムゲット!やね〜」 「攻撃力を強化する効果があるようですね」 「それやったら、左馬刻が着けとくんがええな」 「おう」 黒い石を持ったまま、左馬刻が神宮寺先生の方をチラリと見る。視線に気づいた神宮寺先生が、左馬刻の手から黒い石を取った。 (何で、先生が?) 謎の行動をとる2人に戸惑っていると、神宮寺先生が左馬刻の三つ編みの留め具に触れた。 「せっかくだから、編み直しますね」 「頼むわ」 (何やねん、この空気は。編み直し?) 声に出さずに突っ込んでいるうちに、留め具が消えて緩く解けた左馬刻の三つ編みを、神宮寺先生が編み直していく。当たり前〜みたいな雰囲気出しとるけど、左馬刻、そんなん他人にさせるキャラちゃうやろ!? 835 marushu_twDONEひとこと台詞ガチャ(https://odaibako.net/gacha/536)さんのお題で書いた左←寂。前に書いた左→寂の先生視点「もう、大丈夫ですよ」 腕の傷口に絆創膏を貼ってそう声をかけると、逞しい手が小さく拳を作り、紅い瞳がすっと逸らされた。少しだけ、胸が疼く。 「礼は言わねえぜ、先生」 「ええ、私がやりたくてやっていることです」 これくらいで大袈裟だ、と言い張る彼を説き伏せ手当てをしたのは何度目だろうか。左馬刻くんは一つため息をついて、立ち上がった。 「…コーヒー、飲むだろ。淹れてやんよ」 礼は言わない、と言いながら毎回美味しいコーヒーを振舞ってくれる不器用な優しさに心が暖かくなる。救急箱を片付けて彼が座っていたソファーに腰掛けると、僅かに香水の匂いが立つ。 とくり、と跳ねた心臓に向き合う勇気は、まだ無かった。 301 marushu_twDONE2W1Hガチャ-あまあま恋愛編-(https://odaibako.net/gacha/617)さんのお題で書いた左寂…あー、別に、隠してるつもりは無かったんだがよ…まあ、確かに調子は悪いが、先生に心配されるほどでもねぇよ。 何つーか、微熱が続いてるみてぇなダルさとか息苦しさが時々あるだけで…いや、家だといつもと変わらねえから体温計では測ってねえな。 動悸?ああ、たまにあるな…どんな時にって、そうだな……。 目を逸らし、しばし考え込む左馬刻くんをゆっくり待つ。医者では治せない病気に罹ってしまったらしい彼の口からはどんな名前が出るだろうか。…私のあさましい期待を断ち切ってくれるなら、どんな名前だっていいのだけど。 「…そういえば、先生といるときが多いな」 こちらを見据えギラリと光る紅に思わず息を呑む。心臓が早鐘を打ち一気に体温が上がった。きっと拗らせると覚悟していたこの治せない病気にはどうやら、さらに病状を進める特効薬があったようだ。 365 marushu_twDONE男ふたりの色んなシーン(https://odaibako.net/gacha/1739)さんのお題で書いた左寂代わりに、誓いの口付けを。寂雷の小指の根元にちらりと光るものを見つけ、左馬刻はその左手を取った。身長の割に細いとはいえ、骨ばった男の指にいかにも子供用の指輪はいささか不恰好だ。 「ああ、つけたままだった。今日退院した子に貰ったんだ」 「……似合わねえな」 「そうだね、でも」 すり、と、寂雷のかさついた指が左馬刻の手のひらを撫で、銀の台座の真ん中で宝石を模した青いガラスが光を反射しキラキラと輝く。 「この青が、なんだか君を思い出して」 愛おしげに目を細める寂雷を見て、左馬刻は安っぽい指輪の横(くすりゆび)に小さくキスを落とした。 全てをすくおうとするこの手に、指輪(かせ)は似合わない。 283 marushu_twDONEしあわせそう。(https://odaibako.net/gacha/3238)さんのお題で書いた左寂先生は、愛されることに慣れていない。自分は慈愛の手を何処にでも伸ばそうとするくせに、それが自分にも向けられることがあるとは思ってもいないようだ。 「おや…ご飯、作ってくれたのかい」 「先生疲れてんだろ、これくらいやらせろよ」 ついでに、と手招きして近づいてきた唇に軽く口付ける。困ったように微笑んでいるその表情(かお)も悪くないが、これくらいは素直に受け取ってほしい。 (……ま、そのうち嫌でも慣れるだろ) この人だけは、絶対に手放さないと決めたのだから。 228 marushu_twDONE言えない攻めガチャ(https://odaibako.net/gacha/3291)さんのお題で書いた左寂しゅる、しゅる、と静かな音を立てながら、柘植の櫛が寂雷の髪を滑る。ほつれの無い菫色を無言で梳き続けている左馬刻はどうやら虫の居所が悪いようだが、それをぶつけないよう少し距離を保とうとしている不器用な優しさに、寂雷は思わず笑みをこぼした。 「…んだよ」 拗ねたような声に振り返ると、憮然とした表情とは裏腹に、目の前の獲物に今にも飛びかかりそうなほどギラついた紅い瞳と目が合って、寂雷はへの字の唇に軽くキスをした。 「キス、したいのかと思ったけど、違ったかな?」 悪戯っぽく笑いながら尋ねた寂雷の顎を掴み、左馬刻が唇を押し付け舌を絡める。暫しの間、水音だけが部屋に響いた。 「合ってっけど、足りねぇ」 息継ぎの合間に、低い声が落ちる。再びぶつかるように食らいついてきた唇を受け止め、寂雷はそっと目を閉じた。 351 marushu_twValentineバレンタインの左寂バレンタインポストに頂いたチョコをネタにさせていただきました天秤を傾けたのは、小さなライター寂雷がそれに気づいたのは、自分では使わない灰皿を片付けてしまおうとした時だった。 古くも質の良いジッポライターが、柔らかな銀色の光を湛え、陶器の灰皿の横で静かにその存在を主張している。 (今度は、ライターか) 左馬刻は寂雷の家に来ると、何か一つ忘れ物をしていく。その度寂雷が「忘れ物だよ」と連絡を入れ次に会う日を決める。――お互いに、何も気付かないふりをして。 ちょっとした好奇心で寂雷がライターを手に取ると案外重みがあり、手に吸い付くように馴染んだ。よく手入れされた愛用品だということは一目瞭然で、普通なら忘れるようなものではない。 (彼も、そろそろ痺れを切らしてしまったのかもしれないな) 一つ息を吐いた寂雷は携帯端末を手に取り、メッセージを送った。 709 トゥンDOODLE朝にブレスレットを取っておいた🐴にブレスレットを着けてくれる💉先生