荒唐 2 それから直ぐに、飛雨に連れられ百世は彼の運転する車に乗せられる。淡い灰色をした普通自動車であり、乗り込むと芳香剤らしき石鹸のような香りが漂う。百世が後部座席に乗ろうとすると、既に運転席に座っている飛雨が助手席を叩いた。
百世は無論眉間に皺を寄せたが、飛雨は機嫌良さげな笑顔で座席を叩くばかりであり数分の攻防の末百世が折れ、助手席に乗り直す。石鹸の香りと血生臭い匂いが混じり合ったものが鼻を捻じ曲げる勢いであり、百世はエンジンが掛かり次第即刻窓を開けた。彼女が吐く所まで行かなかったのは、ひとえに乙女のプライド故である。
かくして走り出した車は夜だというのに街灯も疎らな細い道を何度か通り、やがて古いビルの脇にある駐車場に辿り着いた。足場はコンクリートではなく砂利であり、車に微振動を響かせる。それが百世にとってはとどめとなり、彼女は車の扉を開けるなり崩れ落ちた。
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