短冊に願いを…「良かったら、どうぞ」
バイト帰りに商店街を歩いていると、声をかけられ、何かを手渡された。青紫色の短冊に、「ああ、もう七夕なのか」と驚いた。月日が流れるのは以外に早い。あの夜から、いつの間にか○ヶ月が過ぎていたのか。手渡された短冊をボディバッグの中にしまうと、商店街を後にした。
『短冊に願いを…』
時刻は夜の八時。屋台が並び賑わう道路から離れ、裏道を通っていく。七夕前日の曇のち雨という天気予報が嘘のように晴れた。夜空に輝く星々に織姫と彦星は出会ったかなと、ロマンチックなことを考えてしまう。
「柄じゃないな」
大学の友人たちに誘われた七夕祭りには、気を使われている気がして、どうしても行く気になれず、断りを入れた。バイトの予定も入っていた為、長くは一緒に遊べないのはわかっていたし、一人になりたかったのもあるのだ。
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