fairy tale〜赤ずきん〜 once upon a time...
――オーブ王国という国の辺境の村に、愛らしい女の子が住んでおりました。
光をはじく金色の髪を大きな赤いずきんで隠していたため、誰もが名前ではなく『赤ずきん』と呼んでいました。
「よーし、準備完了」
赤ずきん――カガリは、中身を確認し終えたバスケットを抱え、元気に立ち上がった。手作りのクッキーとパン、小さな瓶に入れたワインも入っているから、それなりの重量がある。けれど、どれも置いていくことなどできない。
腰を痛めて寝込んでしまっている大切な人に、どうしても届けてあげたいのだ。
「じゃ、行ってくるな!」
見送ってくれる姉代わりともいうべき女性に声をかけると、彼女は心配そうに顔を曇らせた。
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