いや、うん、うっかり。 ぽかん、と表現するにぴったりな半身の表情。
「あっ」
メンテナンスから帰ってきたアオガミを出迎えた際、少年は反射的に彼の青色の髪に手を伸ばしていた。
出会った頃とは異なり、少年の傍から離れたくないと、メンテナンスを忌避する主張を見せてきたアオガミ。"嫌なこと"を終えてきた彼を少年は褒めたかったのだ。
その行為が――頭を撫でる。
だが、少年は何の前置きもなく突然勝手に触れてしまった。己の反射的な行為を反省し、少年は謝罪を述べようと口を開こうとしたのだが。
「……」
普段の表情に戻ったアオガミは、無言で少年の手が離れた己の頭部に手を伸ばしていた。
「君は、私を褒めてくれたのだろうか?」
戸惑いながらの半身からの問いかけ。対して、口を閉ざした少年は遠慮しがちに頷く。
「そうか」
小さく呟かれたその声は穏やかで、優しく。
「……そうか」
金色の双眸を僅かに細め、アオガミは穏やかな微笑みを見せてくれたのであった。
以降、アオガミの頭を全力で撫でる少年の姿が見られるようになるのだが――それは、また別日の事である。