嫌いが好きに変わるのは 雨が降り、湿度が高い日は憂鬱だった。
空気がじっとりしているし、屋外で読書を嗜むのも憚られる。からっとした晴れの日が恋しくなる。
そんな時間、だったのだが。
「少年?」
俺の視線に気づいたのだろう。アオガミが不思議そうに首を傾げる。じっと向けてしまっていた視線への違和感故に。
「雨も偶にはいいかもって」
嘘を言ってはいない俺の言葉。
どこか腑に落ちない様子であったが、アオガミは再び俺が貸した端末へと視線を落とす。
――同時に、ぴょんと、小さく跳ねる彼の後頭部の髪。
今まで見たことがない、現在の高い湿度から生まれたアオガミのくせっ毛だ。
(かわいいなぁ)
新たな半身の一面を見られた事に口元を緩ませながら、俺は静かな雨音を心地よく感じるのであった。