探し人 幼い頃、己が頻繁に迷子になっていたことを少年は覚えている。
絵本に熱中している間だけは大人しくしているので、両親が頻繁に本を買い与えていた。尤も、一度読み終わればどこかへ行ってしまう子供だったのだが。
たった一人で、ふらふらと。
何かを求めて探し回るように。
「少年?」
そんな過去の己の姿を思い出しながら、少年は隣を歩むアオガミを見上げた。突然、少年から向けられた視線に彼の半身は首を傾げる。
――両親に見つけられると、大泣きをする子供でもあった。
自分はそんなに寂しかったのだろうか、と。少年にとっては迷子になっていた理由よりも不思議であった泣いていた理由。今ならば分かる、その原因。
「アオガミがいるなぁって、思っただけだよ」
――きっと。
――きっと、あの時の自分はアオガミが見つからなくて泣いていたのだと。
少年からの断片的な回答に戸惑うアオガミに笑顔を向けつつ、少年は大きな白銀の指先に己の指を添える。
躊躇わずに握り返してもらう感覚に一層喜びを覚えながら、少年は二人並んで道を行く。
泣いていた幼子はもう、どこにもいないのである。