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    A_wa_K

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    お年玉を貰って戸惑うアオガミと、少年の小噺。

    お正月~2023~「なんか、一杯貰っちゃったね」
     一月一日、新年の東京。
     寮室を出た時より明らかに重みを増したコートのポケットを軽く叩きつつ、少年は隣を歩くアオガミに笑いかけた。
    「あ、あぁ……」
     いつになく歯切れが悪い半身の反応。その原因を思い出し、少年は一層笑みを深めるのであった。
     初詣としてカンダの社に向かおうと提案をしたのは、少年である。彼の誘いをアオガミが断る筈もなく、ふたりはダアトへ向かうべく新年早々、医科学研究所を訪れたのであった。
     結果、彼らを迎えたのは当直――というよりも、忘年会から新年会へと移行していた研究員達や、珍しい戦闘員達の面々。そして、新年の挨拶を交わした直後に少年とアオガミの目前に差し出されたのは、色々な柄のポチ袋達であったのである。
     そう、少年とアオガミの目前に。
    「私が受け取って、本当に良かったのだろうか」
     驚きつつもすんなりと受け取った少年と、最後まで受け取りを拒否しようとしていたアオガミ。
     自身は子供ではないとポチ袋の提示者達に告げれば、製造されてから約20年しか経っていないと指摘され、20年は経っていると応じれば、稼働時間は約2年だと言い返されてしまったアオガミ。苦しい言い訳として「私は物品の持ち運びが出来る状態ではない」と口にしてしまった結果、隣に立つ少年に「俺が持つよ」と提案されてしまい、逃れることは出来なかったのである。
     故に、少年のコートの左ポケットはアオガミ宛のお年玉入れとなっていた。
    「国津神達からも受け取ってしまった」
     医科学研究所を抜け、ダアトに到着して一息ついたアオガミに追い打ちを掛けたのは目的地であるカンダの社に住まう悪魔達であった。
    『人間達の行事であるが、真似するのも悪くないだろう』
     口々にそう宣い、差し出されたのはマッカが入った授与品袋であった。
     こちらも、ふたりに向けて。
    「良いんだよ」
     半身の戸惑いの理由を少年は察していた。
     アオガミが抱いているのは、"お年玉"という一種の行事の対象になっている違和感ではない。アオガミは、己に向けられる好意の受け止め方に戸惑っているのだと。
    「だって、お正月なんだから」
     だからこそ、少年はアオガミが抱くもやもやの正体を指摘はしない。
    (来年は無理かもだけど、再来年とか)
     アオガミが素直に受け取れるような未来を自分達で創るのだからと。
    「越水さんからも貰えるだろうしね」
    「確かに、少年は貰えるだろう。しかし、私は彼の弟だ」
    「弟だからこそだよ」
    「そうだろうか」
    「そうそう」
     ハレの日であれど、休みの施設が多いからか、東京を離れてる人が多いからか、普段とは違う静けさを感じる街中。
     初詣を終えた彼らは、ふたり並んで寮への道をゆっくりと進むのであった。

     ――尚、後日。
     予想通りに越水ハヤオからもお年玉を受け取った少年とアオガミであった。
     但し、その裏側で「18年分を一気にではなく、毎年ゆっくりと渡して行きましょう」と準備する金額の多さに驚いた敦田ユヅルに指導されていた越水が居たことは、ハヤタロウのみぞ知るのである。
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