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    A_wa_K

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    とある冬の日の話。少年とジャックフロスト&アオガミとイズンのやり取りが多め。

    炬燵と雪だるまと ――真冬の寒い日、炬燵に入りながら食べるアイスクリームは格別で或る。
     まるで偉人が遺した名言のように仰々しく呟かれた言葉。ジャックフロストは後頭部でその呟きを受け取りつつ、己の体を戒める少年の2本の腕を抗議の意を込めて軽く叩くのであった。
    「オイラ、アイスクリームじゃないホ」
    「知ってる」
    「オイラ、雪だるまだホ」
    「知ってる」
    「溶けちゃうホ!」
    「この程度じゃ溶けない、溶けない」
     風呂上がりに炬燵に入り、読書を続けていたせいで火照った体を胸元に抱くジャックフロストで涼めつつ、少年は「気持ちいい」とジャックフロストを一層強く抱きしめるのであった。
    「ヒホ~……」
     契約者故に、親しい故に、少年がただの人間であるが故に。
     魔法を使って抗う訳にもいかないジャックフロストは、助けを求めて炬燵の天板へと視線を向ける。そこには正座をしながら蜜柑の皮を剥くアマノザコと、机上に広げられたスナック菓子に伸ばされるジャアクフロストの腕があった。
    「助けてホ~!」
    「矛先がこっちに向いたら困るので、オイラには聞こえてないホ」
    「そんなの、逃げればいいだけじゃん」
     自己防衛の為に素知らぬふりをして菓子を摘まむ黒色の指先と、頬を膨らましながら不機嫌そうにそっぽを向く青色の髪の女悪魔。
    「ヒホ……」
     室内には他の仲魔達も滞在しているのだが、誰も彼も助けてくれる気配はなかった。 
    「お前、オイラを抱きしめてたら読書が出来ないホ?」
    「今はワイヤレスイヤホンで朗読を聞いてるから」
    「読書が趣味じゃないのかホ!」
    「読書にも色々な形態があるんだよ。今は、ジャックを抱きしめながら朗読を聞いていたい気分」
    「ヒ~ホ~!」
     正に糠に釘、暖簾に腕押しの状態である。
     遂に諦め、黙って少年に身を任せるジャックフロスト。
     その様子を珍しく"焦り"を表情に滲ませつつ、台所から見守っていたアオガミ。ぬるくなってしまった緑茶が入った少年のマグカップを持ちながら二の足を踏んでいた彼を見上げつつ、イズンは微笑むのであった。
    「ほら。本当に嫌なら、ジャック君はとっくに逃げ出してるって言ったでしょ?」
    「無論、心配はしていない。少年は相手が嫌がる行為を強要する人間ではない」
    「じゃあ、どうしてそんなに焦ってたの?」
    「焦る?私が?」
     イズンからの質問に対し、振り返って首を傾げるアオガミ。
     少年の半身たる神造魔人が滲ませていた感情。傍に居たイズンが即座に察した彼の心。
     第三者が同じとは断言出来ないが、明らかに似た感情を隠さずに発露させている天板の上で拗ねているアマノザコの姿を視界に収めつつ、イズンは僅かに肩を竦めるのであった。
    (アオガミ君が"嫉妬"を自覚出来るのは、まだ早かったかな)
     ジャックフロストを抱きしめながら幸せそうに炬燵に入りつつ横になっている少年と、文句を言いつつ満更でもないジャックフロスト。そんな雪の妖精の嫉妬を向けつつ蜜柑を頬張るアマノザコに、炬燵周辺の様子を遠巻きに観察し続けるアオガミ。
    「ううん、なんでもないわ」
    「?」
     この光景がどのように変わっていくのかを楽しみに思いつつ、イズンは"普通の"林檎を可愛らしい兎型に切り終えるのであった。
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