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    A_wa_K

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    異世界で約束をするふたりの小咄。(ナホビノ in 世界樹の迷宮3)

    約束の朝「海とは、青いのだな」
     朝日が差し込むアーマンの宿の一室にて、ぽつりとアオガミが呟いた。
     龍脈での移動の最中に迷い込んだ異世界にて、ナホビノがふたりとなる機会は非常に少なかった。
    『君に何かがあってはならない。故に、合一を解くならば、第三者が居ない場所を推奨する』
     少年の身を案じるアオガミからの提案であり、願いである。
     ふたりになる時間が短いのはやはり不満であるが、少年は大人しくアオガミの言葉を受け入れた。そして、今がその僅かな機会である。
    「うん、凄く青い」
     東京は海が近い都市ではある。しかし、少年が東京の海を目的に足を運んだ事はない。人間界ではモノレールの窓越しに眺める程度で、寧ろダアトの赤黒く蠢く海の方が見慣れた光景となっていた。
    「東京の海とは全然違う」
     色鮮やかな花と青々とした木々、色彩に満ち溢れた海の都。
     東京ともダアトとも全く異なる景色を見下ろしながら、少年はやはりと納得してしまうのだ。ここは、自分達が生き続ける場所ではないのだと。
    「アオガミ」
     半身の名を呼び、少年は黄金の双眸を見上げる。
    「東京に戻ったら、一緒に海に行こう。ここの海みたいに、心惹かれる景色じゃないかもしれないけど……」
     アオガミをがっかりさせたらどうしよう、とだんだんと小さくなっていく少年の声音。
    「少年」
     己の半身の不安を察したのか、アオガミははっきりと少年の名を呼んだ。
     黄金の双眸に映るのは美しい街並みでも、青々とした海原でもない。
    「君と一緒に見るのが楽しみだ」
     アオガミだけを映している緑灰色の瞳を持つ、唯一の半身だ。 
    「……うん」
     約束だよ、と少年はアオガミに手を伸ばす。同時に、アオガミの手も少年の手へと触れ――。
    「ナホビノ!起きてる~?」
     ノックの音と同時に、扉の向こうから聞こえてくる『仲間』の声。
    「起きてるよ」
     直ぐ行くと言葉を続けるナホビノは、朝日を浴びて輝く青色の髪を揺らしながら、扉へと手を掛けるのであった。
     
     今日も一日、世界樹の迷宮を巡る冒険が始まるのだから。
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