「おはようございます! えっと……今日も良い天気ですね!」
「雷雨ですけど?」
彼女はそっと目を逸らした。窓の外は休校になってもおかしくないほどの土砂降りだ。稲光が教室を照らせば数瞬遅れて雷鳴が轟き、制服を乾かしていた生徒たちがどよめく。
「……わたし雨好きです! だから良い天気です!」
「主観」
暴論すぎる。実家で雷神でも信奉してます?
「良い天気ですね! 良い天気ですよね!?」
「自分の価値観を押し付けるな! あと近寄るな触るな手を握るな!!」
こだわりポイントじゃないだろ! 悪天候だろ認めろ! 強行突破やめろ!!
……気づいてしまうこと自体癪ではあるけれど、きっと登校してすぐ、僕のもとへ来たのだろう。彼女の髪が心なしかしっとりとしていて、いつもより少しだけ、……本当に少しだけ、年相応程度には……色っぽく、見えるような気がした。つまり普段は色気のかけらもないということなのだが。
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