「ん……」
モクマの瞼がゆっくりと持ち上がる。すぐ隣で空気が動く気配を察知したモクマはあっという間に意識を浮上させ、首を動かさずに視線を巡らせた。
朝陽が部屋のカーテンの隙間を縫って足元をうっすら照らしている。
反対側に目を向けると、彫刻のような美しい男の顔が間近にあった。高い鼻梁は天井を向き、長い睫毛に縁取られた透き通った瞳が薄い瞼を押し上げていた。煌めきを放つ紫水晶がとろり転がってモクマと目が合う。
起きたばかりの彼は常の鮮烈で過激な空気は鳴りを潜め、清流のような空気を纏っていた。
彼の目覚めにつられて自分は目が覚めたのだなとモクマは理解した。
「……おはよ、チェズレイ」
ごろりと横向きに身体を転がして、柔らかく名前を呼ぶ。モクマの挨拶にチェズレイはニッコリと微笑み返した。
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