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    chisaorito

    @chisaorito ヴェランをかきます💛💙

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    chisaorito

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    かいてるものができなくて息抜き!!
    ヴェランを書く息抜きにヴェランを書く人…
    楽しかった〜〜〜!!!

    2024/10/15 up

    #ヴェラン
    veranda

    【ヴェラン】Betrunkene Vorschläge.「ランちゃん〜! ランスロットさん〜! 結婚しよ〜!」
     酒気を帯びたヴェインが俺を羽交い締めにして、大きな声で言う。悔しいが、俺の倍はある腕を回されると、もう俺の力では外せない。
     明日はふたり揃って休みだから、ヴェインが酔っても問題ない。ここは俺の家で、他に誰もいないから、醜態を晒しても目撃するのは俺だけだ。
     それに俺は飲まないから……こほん、ちょっとアルコールの分解が苦手なだけで、弱いとかではないぞ。まあともかく、騎士団の方で何か問題があっても、俺が素面でいれば、対処できるしな。
     ヴェインには好きなだけアルコールを摂取して欲しいと思っている。心に溜まったアレコレを、適度に発散するのは大事だからな。
     しかし、ヴェインはアルコールの力を借りて、仕事の愚痴を言うでも、下ネタを言うでもなく、俺にプロポーズの言葉を告げてくる。
     それが発散なのか?
     通算二十五回目だ。前回は一ヶ月前だった。
     プロポーズを受け、俺はいつもと同じ返事をする。
    「結婚したらなにをするんだ?」
     ヴェインは俺から腕を離すと、指を一本ずつ立てて、カウントをしていった。
     その仕草が、ちょっと子供っぽくて、可愛いんだよな。昔と全然変わらない。
    「えっと、ランちゃんに毎日ご飯を作って、お弁当も作って、部屋の掃除に洗濯、ランちゃんがお風呂の後、髪の毛も乾かすし、疲れて帰ってきたらマッサージもします!」
     何故か両手のひらがパーになっていて、笑ってしまうんだ。あと四個はなんだったんだ? 毎回省略されている。
    「うん、それ、結婚しなくてもやってるよな、ヴェイン」
    「ええ〜? ご飯作って〜、弁当も……、わはは、そっかあ〜? やってるなあ?」
     流石に毎日作って貰っているわけではないが、ヴェインは時間があれば飯を作ってくれるし、弁当も差し入れてくれるし、部屋の掃除や洗濯も手伝ってくれるし、髪を拭いてくれる夜も、マッサージをしてくれる夜もある。
     昨日作ってくれたふわふわのオムライスも絶品だったよな〜。
     ヴェインの作ってくれるものは、なんでも美味しくて、俺の顔には満面の笑みが浮かんでいると思う。
     俺が笑っていると、ヴェインも笑うから、俺はなるべく笑顔でいたい。
     そもそも、ヴェインの「結婚したらやりたいこと」が、今挙げたものだとしたら、お前にはなんの利点もないじゃないか。
     一生、俺の召使いのように過ごすつもりか?
     そう伝えると、アルコールで頬を赤く染めたヴェインが、キョトンとして首を傾げた。
    「利点? ランちゃんと結婚したら、俺が幸せになるだろ?」
    「? そうなのか?」
    「そりゃあ、そうさ〜! だって、大切な人と、ずっと一緒にいられるんだもん〜!」
    「別に結婚しなくても、俺はヴェインの傍にずっといるけどな?」
     幼馴染みで親友の俺たち。ヴェインが生まれた時から傍にいて、離れたことなどないのに。もうずっと、家族のように過ごしてきた。
     ヴェインの望んでいることは、結婚なんてしなくても叶えられるだろう。
    「でもでも、家族じゃないもん!」
    「え? ……家族じゃ、ない?」
     意外だった。ヴェインがそんなこと言うなんて。
     俺の両親は、ヴェインを「息子」と呼ぶし、ヴェインだって俺の実家へ戻った時には、「ただいま」と言うのに。
     ヴェインは、俺を家族だと思ってないのか。
     俺は今までヴェインを弟のように可愛がって――弟がいないから、本来はどんな風に可愛がるのか分からないけど、可愛がってるつもりなのに。
    「家族じゃねえよ! 俺はランちゃんの弟じゃないし、ランちゃんは俺の兄貴じゃ、ねえから!」
    「そ……、そりゃ、そうだけど……」
     そんなに強く否定しなくてもいいだろ。
    「そりゃー、ランちゃんは、カッコよくて〜、兄貴みたいに頼り甲斐あるし、優しくて、包んでくれるけど……」
     今まで、兄の気分で接する時もあったけど、もしかして不満に思っていたのか?
     ヴェインに不愉快な思いをさせてたのか? と、心配になったけど。
    「兄弟は結婚出来ねえから!」
    「男同士も出来ないからな」
     思わず強い口調でつっこんでしまった。
     まさか、俺と結婚したいから、兄弟はイヤだって言うのか? 家族じゃないっていうのは、『結婚して』家族になりたいからか。
     だが、俺の世話をする為だけに結婚するなんて、それで本当にヴェインは幸せなのか?
     ……ヴェインなら「うん」って言うんだろうけど。
    「ちがうの〜」
     小さな泣きそうな声を出して、ヴェインが再び俺に抱きついてきた。フワッとアルコールの匂いがして、それだけで俺は酔いそうだ。
    「ちがうの、ランちゃんを俺だけのものにしたいの」
    「お前のものに?」
    「誰にもあげたくないの。俺がランちゃんを幸せにしたいの」
     ヴェインが俺を幸せにしたいって言うなら、それも、もうとっくに叶えられてる願いだけどな?
     ヴェインが傍にいる人生で、俺がどれだけ幸せを貰ってると思ってるんだ?
     ヴェインが隣の家に生まれて来てくれたこと。
     それが、俺の幸福の始まりだと思う。
     ヴェインがいない人生を、俺は考えられない。
    「それに……」
    「それに?」
    「ランちゃんをいっぱい抱きしめて、キスもいっぱいしたいって、思うから……」
    「今も抱きしめてるだろ」
     酔ったヴェインは、いつだって俺を抱きしめる。酔ってなくても、抱きしめられる時もあるぞ? もしかして、スキンシップが激しいという自覚がないのか?
    「キスは……、まあ、確かにしてないけど」
     唇に、は。挨拶や慰める時に、頬やオデコへキスをする時はある。
    「うん、ランちゃんがしてもいいなら、する」
    「あー、こらこら!」
     顔を傾けたヴェインが近づいて来て、慌てて手のひらで口元を覆った。湿った柔らかい感触を、手のひらで受け止める。俺たちの唇の間には、俺の手のひらがあるだけだ。鼻の頭が触れ合ってるぞ。
     距離が近い!
    「ふぉらあ、けっこんしらいと、チューできらい〜」
     酔いのせいか、口を塞がれているせいか、両方か、ヴェインがモゴモゴと訴えてきた。
    「違うだろ。結婚しなくてもキスは出来るだろ」
    「じゃあ、しよ?」
    「あのな、それ以前の問題だ。お前はいつも言い忘れてる」
    「なにお〜……」
     言い掛けたヴェインの口がゆっくりと閉じていく。瞼もとろりと下がっていった。酔っ払いが睡魔に攫われていく様子を眺めてしまう。
     意識を手放したヴェインの身体を、両腕でしっかり受け止めた。酒を飲んだ身体は、普段より体温が高い。子供の頃の体温みたいで、懐かしい気持ちになった。
     ヴェインは完全に寝入って、ズルズルと体重を預けてくる。
    「重いなあ……」
     それは愛しい重たさで、厚みのあるヴェインの身体を抱きしめた。
     ヴェインが小さな時から知っている。
     季節がまわるたびに、大きくなって、抱えきれないほど逞しくなった。傍でずっと見てきた。
     抱えきれなくなるほど大きくなったのは、何もヴェインの身体だけじゃない。
     約束がなくたって、俺はずっと一緒にいるつもりだけど、ヴェインは約束が欲しいのか?


    「ランちゃん、ランスロットさん、俺と結婚して!」
     翌朝、目覚めたヴェインが俺を抱きしめたまま、そう言った。夢かと思ったけど、空耳でも、寝言でもなく、ヴェインが俺に向かって言ったらしい。
     これは、抱きしめてると言うのだろうか。
     昨夜は、眠ってしまったヴェインの重い身体を抱えたまま、俺もその場で眠ってしまった。ヴェインを抱えて移動するのは重すぎるから、だいたいいつもその場で眠る。
     目覚めたのはソファーの上で――正確には、ソファーに仰向けになったヴェインの上だった。
     俺がヴェインを抱えていた時は、俺が下だったはずだ。いつの間に入れ替わったのか。一度目覚めたヴェインが、自分の重さを気にして入れ替わったのだろう。
     伝わる体温と、柔らかな筋肉を感じつつ、間近にあったヴェインの顔を眺めていた。
     起きている時はくるくる表情が変わって、時には大袈裟にも見えるけど、黙ってれば端正な顔だよな。つい忘れるけど。
     男らしい輪郭を指でなぞっていると、不意に瞳が開かれて、エメラルドグリーンに真っ直ぐ見つめられた。
     俺が触れたから、目が覚めてしまったのか。よく眠っていると思って、つい触れてしまった。
    「……よく、眠れたか?」
     囁くような小声しか出なかったけれど、そう聞いてみると、俺の腰に回されている腕に力が篭った。
     これ、抱きしめられてるよな?
     酔ってないヴェインに?
     そう思っていたら、プロポーズをされたんだ。語尾に力が入っている。
     数時間前に聞いたのとは、口調が違ってちょっとドキっとしたぞ?
     目は覚めても、きっとまだ酔いが覚めていないのだろう。そんなに深酒だったか?
     二度もプロポーズをするほどに。
    「……俺と、結婚したらなにをするんだ?」
     酔ったヴェインに返す言葉を、また口にする。通算二十六回目が来るのは早かったなあ。
    「ランちゃんと結婚したら、俺がランちゃんにしたいこと全部する」
     いつもと違う返答だ。
     指折り数えないのか?
    「……? それは料理とか……」
    「それもする」
     省略されたが、いつも言ってることはするんだな。料理、弁当、掃除、洗濯……。
    「それから、ランちゃんに毎日愛してるって伝えて、キスとエッチなこともいっぱいして、一緒に眠って」
    「……っ」
     ヴェイン、酔いは覚めてるのか。
     ヴェインの指が三本立てられた。
    「結婚したらやりたいこと」を数え終えた時、ヴェインの指はいつも十本になっていた。
     口にしたのは六個の願いで、口にしない願いが四個あったんだ。
     やっと、言葉にしている。
     そして四本目の指が上がる。
    「寿命が尽きたら、同じ場所で眠るんだ」
     俺は目を見開いた。
     ――ヴェイン。
    「だから、俺と結婚してください!」
    「――ははっ、それは、うん。結婚しないと出来ないな?」
     思いっきり、俺もヴェインを抱きしめた。
     ヴェインが飲み込んでいた残りの願いは、酔いが覚めてから告げられて。
     俺は、やはりヴェインに満面の笑顔にしてもらってるんだ。わかるよ。
     だって、ヴェインが笑顔になってるから。
    「ランちゃん、愛してる。生涯、俺と一緒に、幸せに暮らしてください!」
    「もちろんだ……!」
     当然、俺もヴェインを幸せにするからな!
     聞きたかった言葉を、抱擁と共にプロポーズ二十六回目で手に入れたんだ。
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