外の風が強くなってきて襖がガタガタと音を立てて揺れていた。
眠れない、と体を起こして隙間から覗いて見たが雨は降っていない。まだ寝られる時間だと布団に潜り込んだが一度覚めてしまった頭と体はすぐに眠りについてくれるはずもなく。
ケンはぼーっと天井を見て眠たくなるのを待ち続けた。
(……あー…駄目だ…寝れねぇ…。最悪だぜ…ホント…。)
眠りたいのに睡魔が来る気配がない。
ごろりと体を動かしてリュウの方を見るとすやすやと寝ていた。
ゆっくりと動き、布団の中に入り込んで頬を触ったり鼻を摘んだりしてみたが起きる気配がない。あまりの反応の無さに口を尖らせたがリュウの体温は高いのかじんわりと温かい。
もしかしたらこれで寝られるかもしれない、と抱き締めながら顔を埋める。
(…柔らかいんだよな、意外と。)
力を緩めているのもあるだろうが、肌そのものはまだ柔らかくて皮膚が薄い。
まだ成長途中とはいえ筋肉はしっかりあり、ガタイも良くなっているのだ。
ただ夏さえ過ぎ去れば冬の肌は白く黒髪がやたら映える。自分のほうがまだ色黒に見える程に。
時折その肌に触れて歯を立てたくなる。柔らかそうでなんだか美味しそうに見えるから。こんな事を言えば大丈夫か?なんて頭の心配をされそうだがケンは正直その思いをずっと抱き続けていた。
「…ん…」
「!」
「…け…ん?」
ほんのすこし開いた瞳がぼーっとケンを見つめていた。ただすぐに閉じて睡魔に再び誘われてしまったようだった。それと同時にぽんと肩に置かれた手が抱きしめようとしているのが分かってドキリとした。
「…リュウ…。」
もう返事は帰って来ない。
再び眠ってしまったようだ。
手を伸ばしてそっと、頬に触れる。
「……俺達は、もうガキじゃない。こんなデケェ身体して、俺だって…この年になったら勘違いだったかもしれないとか思うだろって…思ってたけどさ」
独り言を呟いてぎゅう、と唇を噛み締める。リュウが欲しい、この無防備な男を手に入れたい。
自分にしか見せないその笑顔がいつも輝いて見える。少しぎこちない笑みにどうしようもなく惹かれているのだ。
触れる度、話す度、ただただケンにとっては大きな刺激となっている。
今だって、そうだ。
リュウの手を握り、それに口を付ける。
(何も知らない子供のままなら、こんなに苦しむ事もなかったろうよ)
目を閉じ静かに愛を告げた。
吐露する様に、言い聞かせる様に、何度も。
たったひとつの恋を押し殺す様に。