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    Jeff

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    お題:「間違い」
    #LH1dr1wr
    ワンドロワンライ参加作品
    2023/11/27

    #ラーヒュン
    rahun
    #LH1dr1wr

    Buddy「ラーハルト、見てくれ」
     呼ばれた男は、ダイニングに向かって「今行く」と呟いた。
     最後のクロケットにパン粉をまぶし、鍋の火加減を調節する。
    女王クイーン、D6、僧正ビショップを取る。どう思う?」
     ヒュンケルの弾んだ声に、ラーハルトは粉だらけの両手を振りつつキッチンから出てきた。
    「相手のレベルは?」
     エプロンで両手を拭い、魔法のチェス盤を覗き込む。
    「階級はビギナー、妖魔系モンスター、対戦履歴は十五回」
     と、ヒュンケルがステータスを読み上げる。
    フェイクだな」
     ざっと棋譜を見返して、ラーハルトが鼻を鳴らす。
    「少なくともベテランだ」
     地上から魔界までを接続する、チェスプレイヤーの通信魔法ネットワーク
     どんな天才が構築したやら、今や魔界を中心に大流行中だ。
     ランダムに発生する見知らぬ相手との対戦に、二人ともすっかり夢中になっている。
    「分かってる。油断できない」
     盤面を睨みながら、ヒュンケルが同意する。
    大魔王記念杯ワールドカップ開催が近いから、皆点数稼ぎに必死だ。だがこっちも、そう簡単には敗けないぞ」
     今回の相手は『睡眠不足の妖魔学生』。
     ふざけたチーム名だが、明らかに名手だ。
     対するヒュンケル・ラーハルト組、その名も『トカゲとゾンビ』は追い込まれていたが、徐々に挽回。
     ラーハルトと協力して、遂に逆転に成功した。
     が、あと一歩で勝利と言うところで、二人とも黙り込んだ。
     数十秒、戦局を見渡す。
     弱火にかけたままの鍋料理ポトフが、ことこととリズムを刻んでいる。
    「……騎士ナイトでセントラリゼーション」と、ラーハルトが呟く。
    兵士ポーンのプロモーションは?」ヒュンケルが聞き返す。
    「ステイルメイトの危険が」
    女王クイーンではなく僧正ビショップに昇格させれば」
    「相手の罠かも知れない、よく考えろ」
    「考えたさ。俺はプロモーションを選ぶ」
     その後、たった数手。
     見事にステイルメイトに持ちこまれてしまった。
     優勢だったのに、引き分けだ。獲得ポイントは半減。
     『またのご参加をお待ちしています』
     カラフルなGAME OVER、の文字が点滅する。
     毒消し草の陽気な広告が流れたのち、ぷつんと静かになった。
    「……」
    「……だから言っただろう」
     と、ラーハルトのため息。
     言い返す言葉もなく、ヒュンケルは頬を膨らませる。
    「まだだ。まだ時間はある。あと数百ポイント勝ち越せば、オリハルコン・クラスに昇級なんだ。シード権を取れる」
     再度、試合を立ち上げて相手を探すヒュンケルの肩に、ラーハルトが顎を乗せる。
    「次は俺の言うことを聞け」
    「うるさい。二度とミスはしない」
     不機嫌な相棒の頬に、ラーハルトは軽いキスを落とす。
    「間違いを犯すから人間なんだ、ヒュンケル。お前も、俺も」
     珍しい台詞を吐いた。
     ヒュンケルは横目でラーハルトを見る。
     しばし考え、ゲームに視線を戻す。
    「――今度は二人で勝つ。付き合え」
     元・孤高の戦士の要求に、ラーハルトはハミングで答える。
    「晩飯までだからな」
    「わかってるって」
     とろけるような煮込み肉の湯気が、キッチンから漂ってきた。

     
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    ムーンストーン

    DONEダイの大冒険 リア連載時から疑問だったバルトスの敵討ちについて書き連ねました。
    以下バルトスファンとヒュンケルファンには申し訳ない話しが続きますが個人の感想なのでお許し下さい。

    ハドラー(造物主)のから信頼より子への愛情を取って責任追及された事をメッセージに残す=ハドラーへ遺恨を残すことになりませんかとか魔物と人間とは騎士道精神は共通なのねとか。
    ダイ大世界は生みの親〈〈〈育ての親なのかも。
    20.審判(ヒュンケル/ランカークス村)〜勇者来来「勇者が来るぞ」
    「勇者に拐われるから魔城の外に出てはならんぞ」
    懐かしい仲間たちと父の声が地底魔城の地下深く、より安全な階層に設えられた子ども部屋に木霊する。
    この世に生をうけ二十年余りの人生で最も満ち足りていた日々。
    ヒュンケルがまだ子どもでいられた時代の思い出だ。


    「暗くなる前に帰んなさい!夜になると魔物がくるよ!」
    黄昏に急かされるようにランカークス村のポップの家へ急いでいた時、ふいに聞こえてきた母親らしい女の声と子供の甘え混じりの悲鳴を聞いてヒュンケルとダイは足を止めた。

    ヒュンケルが声の主はと先を覗うと見当に違わず若い母親と4〜5才の男の子が寄り添っていた。
    半ば開いた扉から暖かな光が漏れ夕食ができているのだろうシチューの旨そうな匂いが漂う。
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