Jeff
DOODLEお題:「高嶺の花」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/04/28
出待ちの陸せん騎💐
Etoile ヒュンケルは頬杖をつき、あらためて目の前の男をじっと見た。
ベンガーナ中心街をやや外れた、洒落た一角のカフェにて。
初夏の風を楽しむ余裕もないのか、ラーハルトは呆然と掌を見つめたままだ。
「そろそろじゃないか」
ヒュンケルが声をかけると、ああ、と蚊の鳴くような声で答える。いつもの鉄面皮はどこへやら、頬の産毛が数えられそうなくらい幼く見える。
久しぶりだ、相棒のこんな姿は。
ヒュンケルはほくそ笑んで、冷たいライム水を一口含んだ。
彼の相棒、世界一の戦士ラーハルトは。
意外なことに、惚れっぽい。
数年前なら、魔界まで踏み抜く大喧嘩に発展していただろう。実際何度か揉めて、罪もない山岳が半分消し飛んだりもした。
2438ベンガーナ中心街をやや外れた、洒落た一角のカフェにて。
初夏の風を楽しむ余裕もないのか、ラーハルトは呆然と掌を見つめたままだ。
「そろそろじゃないか」
ヒュンケルが声をかけると、ああ、と蚊の鳴くような声で答える。いつもの鉄面皮はどこへやら、頬の産毛が数えられそうなくらい幼く見える。
久しぶりだ、相棒のこんな姿は。
ヒュンケルはほくそ笑んで、冷たいライム水を一口含んだ。
彼の相棒、世界一の戦士ラーハルトは。
意外なことに、惚れっぽい。
数年前なら、魔界まで踏み抜く大喧嘩に発展していただろう。実際何度か揉めて、罪もない山岳が半分消し飛んだりもした。
Jeff
DOODLEお題:「修羅場」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/04/14
Deadline それは、ある晩突然やってきた。
否、既にそこにあったのに、あえて目を逸らしていたのだ。
「それで?」
ラーハルトは冷静を保ちつつ、机に突っ伏した相棒を見下ろした。
「助けて欲しい」
と、ヒュンケルはかすれ声で返す。
見事な銀髪はこんな時にも艶めいているが、てっぺんに紙屑が絡まっていた。
「いつからだ」
重々しく問うと、罪深き男はおもむろに視線を上げた。
徹夜明けの頬に謎の文字が転写されている。インクが乾かぬまま寝入ったのだろう。
「……三日」
「本当は?」
「一週間」
「正直に言え」
「一か月、くらいだ」
「締め切りは、一か月前?」
こくり、と頷くヒュンケル。
「誤解しないでくれ、ラーハルト。これは単純なミスだ。姫の提示する原稿提出期限にはかなりの余裕がある。一か月くらい超過して丁度いい。いつもなら問題ないんだ。だが、複数の記事を請け負っていたことをすっかり忘れていて」
1874否、既にそこにあったのに、あえて目を逸らしていたのだ。
「それで?」
ラーハルトは冷静を保ちつつ、机に突っ伏した相棒を見下ろした。
「助けて欲しい」
と、ヒュンケルはかすれ声で返す。
見事な銀髪はこんな時にも艶めいているが、てっぺんに紙屑が絡まっていた。
「いつからだ」
重々しく問うと、罪深き男はおもむろに視線を上げた。
徹夜明けの頬に謎の文字が転写されている。インクが乾かぬまま寝入ったのだろう。
「……三日」
「本当は?」
「一週間」
「正直に言え」
「一か月、くらいだ」
「締め切りは、一か月前?」
こくり、と頷くヒュンケル。
「誤解しないでくれ、ラーハルト。これは単純なミスだ。姫の提示する原稿提出期限にはかなりの余裕がある。一か月くらい超過して丁度いい。いつもなら問題ないんだ。だが、複数の記事を請け負っていたことをすっかり忘れていて」
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/04/13 お題「修羅場」120分ほど。
姫はどこにでも首をつっこんでくるな…。今回いないけどポも。ツッコミ役二人にはいつもお世話になっております。
武器の意思のありなし問題は、ダの剣よりは薄めだけどちゃんとあるという設定です。持ち主のところに帰るし。 2
Jeff
DOODLEお題:「くしゃみ」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2024/04/07
Blessing 朝風呂は最高の贅沢だ。
と、ラーハルトは思う。
春風そよめくこの家に帰ってくると、つい所望してしまう。
彼の相棒は、汚れてもいないのに長風呂なんて気が知れない、と、子犬のように疑り深い目を向けるけれど。一緒に入るかと揶揄うと、ヒュンケルは片眉を上げるだけで、古文書の解読に没頭してしまった。
パプニカ産の高級綿を肩にかけ、裸の胸を見せつけても、微動だにせずページを繰っている。
――この至福がわからぬとは、不幸な奴め。
煌めく水面に癒されたのち、草原の香りを胸いっぱいに吸い込んで。
途端に冷えが鼻腔を刺激し、ラーハルトは珍しくくしゃみをした。
「へっくし」
「ルビスの加護あれ」と、ヒュンケル。
「む……」
1107と、ラーハルトは思う。
春風そよめくこの家に帰ってくると、つい所望してしまう。
彼の相棒は、汚れてもいないのに長風呂なんて気が知れない、と、子犬のように疑り深い目を向けるけれど。一緒に入るかと揶揄うと、ヒュンケルは片眉を上げるだけで、古文書の解読に没頭してしまった。
パプニカ産の高級綿を肩にかけ、裸の胸を見せつけても、微動だにせずページを繰っている。
――この至福がわからぬとは、不幸な奴め。
煌めく水面に癒されたのち、草原の香りを胸いっぱいに吸い込んで。
途端に冷えが鼻腔を刺激し、ラーハルトは珍しくくしゃみをした。
「へっくし」
「ルビスの加護あれ」と、ヒュンケル。
「む……」
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/04/06 お題「くしゃみ」150分ほど。
ちょっとしたことでもすぐに周りが大事にしそう。きっとそれだけみんな心配してるって事ですね。その筆頭がラー。なぜかって?ラーヒュンの民が描いてるからです! 3
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/03/30 お題「傷跡」150分ほど。
なんか勝手な解釈と勝手な捏造してますが、そのへんは御愛嬌ってことでお許しください。
麻さんちのネタとかぶってしまいましたが、開き直っちゃう。 3
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/03/16 お題「マーキング」100分ほど。
常々、ラーはヒュンを自らの手で自分好みに全身着飾らせたいと思ってると思うですよね。独占欲を隠しもしない。ヒュンはヒュンでラーの好きにすれば良いとか思ってそう。 3
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/03/09 お題「本命」170分ほど。
他のお客さんも呆れた目で見てますよ!もはや賭けどころじゃないって。
全く、隙あらばいちゃつこうとする困った奴らですわ。 3
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/02/10 お題「照れ隠し」150分ほど。
某御方のつぶやきの「ラーヒュンは生き返ってきてから互いに触れていない」というお言葉から着想をいただきました。なるほど、日常では安易に触れ合ってないんだな、と。 3
chihomuuran
DONE #LH1dr1wr第86回ワンドロお題「迷子」
ラーヒュン、寿命差死別ネタ含
2人で旅をして、初めて人混みの中で互いを見失った。慣れない大きな街の通りで人にぶつからぬよう、避けたり早足になったりと気をつけているうちに、後ろにいるはずの同行者の姿が見えなくなっていた。
慌てて気配を探るが行き交う人が多すぎる。仕方なく来た道を引き返しながら見知った姿を探す。いた、と思う度に似た背格好の別人で舌を打つ。
マントのフードを被っていなければもっと見つけやすかっただろうが、不用意に目立たぬよう宿が見つかるまではこのままで、という打ち合わせだけ先に済ませてあったのが悔やまれる。とにかく地道に探すしかない、と焦りつつ足を動かす。
それは同行者の方も同じであったようで、どうやら2人とも闇雲に動き回って無駄にすれ違っていたらしい。再び出会うのに小一時間ほども費やし、その後どちらが不注意だったかで少し揉めた。
1037慌てて気配を探るが行き交う人が多すぎる。仕方なく来た道を引き返しながら見知った姿を探す。いた、と思う度に似た背格好の別人で舌を打つ。
マントのフードを被っていなければもっと見つけやすかっただろうが、不用意に目立たぬよう宿が見つかるまではこのままで、という打ち合わせだけ先に済ませてあったのが悔やまれる。とにかく地道に探すしかない、と焦りつつ足を動かす。
それは同行者の方も同じであったようで、どうやら2人とも闇雲に動き回って無駄にすれ違っていたらしい。再び出会うのに小一時間ほども費やし、その後どちらが不注意だったかで少し揉めた。
きのこ
DOODLE #LH1dr1wr2024/01/27 お題「迷子」160分ほど。
迷いそうになったら見つけて引き戻して迷わないように手を引いてくれる。そんな相手。最後不穏なテイストもいれておきました。 4
kohiruno
DONE第74回LH1dr1wr「遅刻」旅第74回LH1dr1wr「遅刻」
2024.2.4
90分くらいかかりました。
*死を扱っています。ご注意ください。
『旅』
剣を置いて道端の岩に腰掛けたラーハルトは、遠くの一本道から旅装束のヒュンケルが歩いてくるのをみた。手には道具袋と魔槍を携えている。
「遅かったな。ようやく合流か」
「だいぶ待たせてしまったな」
ヒュンケルはあたりを見回しながら、ラーハルトの前にやってきた。空一面晴れ渡り、花が咲く草原のそこかしこには、瑠璃色の岩が点在している。人々が佇むなり、座るなりをしてそれぞれ誰かを待っているようだ。
「待ち合わせの名所か。それにしても、腹が減った。色々持たせてもらったのはこういうことか」
ヒュンケルも岩に腰を下ろし、道具袋から出したパンを半分に割って、ラーハルトに差し出す。二人で食べて、水も交互に飲んだ。うっかりと革袋の中身をこぼすヒュンケルをみて、ラーハルトは銀の髪を無造作に撫でた。
18442024.2.4
90分くらいかかりました。
*死を扱っています。ご注意ください。
『旅』
剣を置いて道端の岩に腰掛けたラーハルトは、遠くの一本道から旅装束のヒュンケルが歩いてくるのをみた。手には道具袋と魔槍を携えている。
「遅かったな。ようやく合流か」
「だいぶ待たせてしまったな」
ヒュンケルはあたりを見回しながら、ラーハルトの前にやってきた。空一面晴れ渡り、花が咲く草原のそこかしこには、瑠璃色の岩が点在している。人々が佇むなり、座るなりをしてそれぞれ誰かを待っているようだ。
「待ち合わせの名所か。それにしても、腹が減った。色々持たせてもらったのはこういうことか」
ヒュンケルも岩に腰を下ろし、道具袋から出したパンを半分に割って、ラーハルトに差し出す。二人で食べて、水も交互に飲んだ。うっかりと革袋の中身をこぼすヒュンケルをみて、ラーハルトは銀の髪を無造作に撫でた。
きのこ
DONE #LH1dr1wr2024/01/06 お題「誘う」150分ほど。
⚠かっこいいラーはいません。繰り返しますかっこいいラーはいつもいません。
⚠当店にいるラーはダ様と欲望に忠実な男です。
その辺各自ご注意ください。 4
Jeff
DOODLEお題:「火傷」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2023/12/16
Stigma「本当にいいのか」
ラーハルトが三たび、相棒に尋ねる。
「いいから。やってくれ」
汚れた枕に顔を埋めて、ヒュンケルがけだるく答える。
汗の伝う白いうなじには、真新しい痣と噛み痕が残る。
狂おしい情事の後、本来なら幸福な眠りに落ちているはずだったのに。
明らかに、こんな重大な決断を下すタイミングではないのに。
……いや、違うか。むしろ今を逃せば、一生こんな機会はないだろう。
「早く」
ヒュンケルが自分で確認できない位置だ。
首の後ろ。
銀髪の生え際に残って消えない不思議な火傷の痕のことを、うっかり口に出したのは軽率だった。
即座に、ヒュンケルの瞳が燃えた。
跳ね起きるなり素早く荷物を漁って、ロン・ベルクが餞別にくれた短剣を引っ張り出した。
1584ラーハルトが三たび、相棒に尋ねる。
「いいから。やってくれ」
汚れた枕に顔を埋めて、ヒュンケルがけだるく答える。
汗の伝う白いうなじには、真新しい痣と噛み痕が残る。
狂おしい情事の後、本来なら幸福な眠りに落ちているはずだったのに。
明らかに、こんな重大な決断を下すタイミングではないのに。
……いや、違うか。むしろ今を逃せば、一生こんな機会はないだろう。
「早く」
ヒュンケルが自分で確認できない位置だ。
首の後ろ。
銀髪の生え際に残って消えない不思議な火傷の痕のことを、うっかり口に出したのは軽率だった。
即座に、ヒュンケルの瞳が燃えた。
跳ね起きるなり素早く荷物を漁って、ロン・ベルクが餞別にくれた短剣を引っ張り出した。
Jeff
DOODLEお題:「間違い」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2023/11/27
Buddy「ラーハルト、見てくれ」
呼ばれた男は、ダイニングに向かって「今行く」と呟いた。
最後のクロケットにパン粉をまぶし、鍋の火加減を調節する。
「女王、D6、僧正を取る。どう思う?」
ヒュンケルの弾んだ声に、ラーハルトは粉だらけの両手を振りつつキッチンから出てきた。
「相手のレベルは?」
エプロンで両手を拭い、魔法のチェス盤を覗き込む。
「階級はビギナー、妖魔系モンスター、対戦履歴は十五回」
と、ヒュンケルがステータスを読み上げる。
「嘘だな」
ざっと棋譜を見返して、ラーハルトが鼻を鳴らす。
「少なくともベテランだ」
地上から魔界までを接続する、チェスプレイヤーの通信魔法。
1359呼ばれた男は、ダイニングに向かって「今行く」と呟いた。
最後のクロケットにパン粉をまぶし、鍋の火加減を調節する。
「女王、D6、僧正を取る。どう思う?」
ヒュンケルの弾んだ声に、ラーハルトは粉だらけの両手を振りつつキッチンから出てきた。
「相手のレベルは?」
エプロンで両手を拭い、魔法のチェス盤を覗き込む。
「階級はビギナー、妖魔系モンスター、対戦履歴は十五回」
と、ヒュンケルがステータスを読み上げる。
「嘘だな」
ざっと棋譜を見返して、ラーハルトが鼻を鳴らす。
「少なくともベテランだ」
地上から魔界までを接続する、チェスプレイヤーの通信魔法。
きのこ
DONE #LH1dr1wr11/25「間違い」165分程
お題に沿っているのかももはやラーヒュンといっていいのかわからないですが当人はラーヒュンのつもりで描いています。
お題的には「見たものが見たままのものであるというのは間違いである」とかそういう感じってことで。 6
Jeff
DOODLEお題:「遅刻」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2023/11/04
Parade 祝祭に賑わう街道。
桃色のリボンとヴァニラの香り、透けるような上等な生地。
平和を享受するパプニカが生み出す最高峰の織物が、様々な形をとって街を埋めている。
ラーハルトは直立不動のまま、行き交う人々の笑顔をゆるく追っていた。
――先に行ってるわね。
仲間たちは一人、二人と彼を離れて、城を目指して駆けていった。
正午の鐘が鳴る。
十二時十五分の鐘。
十二時三十分の鐘。
勇者と王女の邂逅を記念した、年に一度の祝いの宴だ。国民は城下の広場に集い、美しく成長した二人がお出ましになる。
正義と融和の象徴たる若いカップルを見上げて、人々は歌い、キスを投げ、心からの愛慕を捧げるのだ。
そして、ダイの腹心の部下ことラーハルトは――彼らの背後に控えて怪しい動きに目を光らせながらも、養父バランの若き日を思って涙する、はずだったのだ。
1514桃色のリボンとヴァニラの香り、透けるような上等な生地。
平和を享受するパプニカが生み出す最高峰の織物が、様々な形をとって街を埋めている。
ラーハルトは直立不動のまま、行き交う人々の笑顔をゆるく追っていた。
――先に行ってるわね。
仲間たちは一人、二人と彼を離れて、城を目指して駆けていった。
正午の鐘が鳴る。
十二時十五分の鐘。
十二時三十分の鐘。
勇者と王女の邂逅を記念した、年に一度の祝いの宴だ。国民は城下の広場に集い、美しく成長した二人がお出ましになる。
正義と融和の象徴たる若いカップルを見上げて、人々は歌い、キスを投げ、心からの愛慕を捧げるのだ。
そして、ダイの腹心の部下ことラーハルトは――彼らの背後に控えて怪しい動きに目を光らせながらも、養父バランの若き日を思って涙する、はずだったのだ。
Jeff
DOODLEお題:「イタズラ」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2023/10/30
Bumblebees 生い茂る広葉樹が、昼下がりの太陽をちらつかせる。
光の差さない紫の森に、石臼に似た轟音が響いている。
息をひそめ、一歩、また一歩と距離を詰めるラーハルト。
後方で岩の陰に隠れ、固唾をのんで見守るヒュンケル。
ぶぅん。
二人の視線の先には、小鹿サイズの巨大蜂、キラービーのてらてらした尻がある。
仕掛けた花束に夢中になっていて、背後の男たちには気づいていない。
短剣ほどもある針の根元にそろそろと手を伸ばし――。
「……やったぞ!」
雷のような唸りとともに、キラービーが舞い上がった。
だいぶ怒っている。
一撃必殺の針攻撃を辛うじて避けたラーハルトが、ヒュンケルの隣に転がり込んだ。
標的を見失ったキラービーは、木々を縫ってジグザグと飛び始める。パニック状態のまま、一目散に逃げ始めた。
2521光の差さない紫の森に、石臼に似た轟音が響いている。
息をひそめ、一歩、また一歩と距離を詰めるラーハルト。
後方で岩の陰に隠れ、固唾をのんで見守るヒュンケル。
ぶぅん。
二人の視線の先には、小鹿サイズの巨大蜂、キラービーのてらてらした尻がある。
仕掛けた花束に夢中になっていて、背後の男たちには気づいていない。
短剣ほどもある針の根元にそろそろと手を伸ばし――。
「……やったぞ!」
雷のような唸りとともに、キラービーが舞い上がった。
だいぶ怒っている。
一撃必殺の針攻撃を辛うじて避けたラーハルトが、ヒュンケルの隣に転がり込んだ。
標的を見失ったキラービーは、木々を縫ってジグザグと飛び始める。パニック状態のまま、一目散に逃げ始めた。
Jeff
DOODLEお題:「二回目」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2023/10/15
Southern Cross「な。言ったとおりだったろ」
浅瀬で海水を跳ね上げる、裸足の指先。
膝までまくった白い足は、以前より目に見えて細い。
ああ、まあな。
ラーハルトはしぶしぶ認めて、夕暮れの浜辺に腰を下ろす。
乱気流のため気球でも到達困難な、断崖絶壁の孤島。
小型の帆船で丸一日格闘し、やっと唯一の入江に潜り込む。
命がけの航海をやり遂げて、島に隠された清い泉ではしゃぎ、遮るもののない絶景で朝日を浴び、割れずに無事だった蒸留酒で乾杯して。
若さを持て余し、意味のない無謀な冒険を繰り返したあの頃は、もう何年前になるのか。
「二回目はないな、などとほざいていたな、ラーハルト」
「貴様。少しは自覚しろ。病で先が短い身で、またこんな無茶を繰り返せると誰が思う」
1279浅瀬で海水を跳ね上げる、裸足の指先。
膝までまくった白い足は、以前より目に見えて細い。
ああ、まあな。
ラーハルトはしぶしぶ認めて、夕暮れの浜辺に腰を下ろす。
乱気流のため気球でも到達困難な、断崖絶壁の孤島。
小型の帆船で丸一日格闘し、やっと唯一の入江に潜り込む。
命がけの航海をやり遂げて、島に隠された清い泉ではしゃぎ、遮るもののない絶景で朝日を浴び、割れずに無事だった蒸留酒で乾杯して。
若さを持て余し、意味のない無謀な冒険を繰り返したあの頃は、もう何年前になるのか。
「二回目はないな、などとほざいていたな、ラーハルト」
「貴様。少しは自覚しろ。病で先が短い身で、またこんな無茶を繰り返せると誰が思う」
きのこ
DONE #LH1dr1wr10/14 「二回目」
二回目の人生では後悔はしたくないラー。
お題に沿ってない自覚があるのでやたらと「二回目」を言わせてしまってますw
キャラが尋常じゃないくらい崩壊しておりますので、かっこいいラーじゃないと無理という方はもうしわけありません。平気だよという方はよろしくおねがいします。 3
chokomoo
DOODLE #LH1dr1wr第69回 『拘束』
一時間以上かかってしまったのでタグ付けるのも迷ったんですが…賑やかしに参加したい気持ち💦
二枚目完全に間に合ってないのでおまけです💦力不足…
襲い受け気味です 2
Jeff
DOODLEお題:「喧嘩」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2023/09/17
Drinking Games「親に叱られたことは」
ラーハルトの投げやりな質問。
「あるさ」
と、ヒュンケル。
「ならば、喧嘩したことは?」
「もちろん」
ヒュンケルは咳払いして、喉を焼く蒸留酒を揺らめかせた。
「だが、命に関わる無茶をした時だけだ。父が本気で怒ったのは」
忘れもしない。
父バルトスの剣を、一本盗んだ時だ。
まだ勇者や人間たちの勢力は脆弱で、底冷えするような敗北の予感に晒されていなかった頃。
ただ子供でいられた頃。
幸せだった地底魔城、旧魔王軍の日々。
苦笑いして、ヒュンケルは小さなグラスを啜った。
「親は二人いるだろう」
と、ラーハルトが琥珀色の酒を注ぎ直す。
「アバンは父ではない」
意識したより強い口調になってしまって、ヒュンケルは唇を噛んだ。
1635ラーハルトの投げやりな質問。
「あるさ」
と、ヒュンケル。
「ならば、喧嘩したことは?」
「もちろん」
ヒュンケルは咳払いして、喉を焼く蒸留酒を揺らめかせた。
「だが、命に関わる無茶をした時だけだ。父が本気で怒ったのは」
忘れもしない。
父バルトスの剣を、一本盗んだ時だ。
まだ勇者や人間たちの勢力は脆弱で、底冷えするような敗北の予感に晒されていなかった頃。
ただ子供でいられた頃。
幸せだった地底魔城、旧魔王軍の日々。
苦笑いして、ヒュンケルは小さなグラスを啜った。
「親は二人いるだろう」
と、ラーハルトが琥珀色の酒を注ぎ直す。
「アバンは父ではない」
意識したより強い口調になってしまって、ヒュンケルは唇を噛んだ。
Jeff
DOODLEお題:「おそろい」#LH1dr1wr
ワンドロワンライ参加作品
2023/09/10
Redmusc こてん。
人差し指ほどのガラスびんを倒して、少し転がしてみる。
香りを纏うなんて、考えたこともなかった。と、ヒュンケルは嘆息する。
死臭が染み込んだ体ごと、香木で燻されたことはあったけれど。ミストバーンの投げやりな育児のなかでも、あれは結構気持ちよかった。
ラーハルトの身体から漂うのは、血と肉と草原が混じり合ったような、不思議な香りだ。
彼が愛用しているこの香水瓶に気づいた時は、柄にもなくワクワクした。
初めての知識は、いつでも刺激的だ。
――どうせ気づかないだろう。自分の匂いなのだから。
頬杖をついたまま、ヒュンケルは口角を上げる。
「少しくらい」
素早く蓋を開け、銀色の一滴を耳の後ろに染み込ませて、ぱふっとベッドに腰かけた。
920人差し指ほどのガラスびんを倒して、少し転がしてみる。
香りを纏うなんて、考えたこともなかった。と、ヒュンケルは嘆息する。
死臭が染み込んだ体ごと、香木で燻されたことはあったけれど。ミストバーンの投げやりな育児のなかでも、あれは結構気持ちよかった。
ラーハルトの身体から漂うのは、血と肉と草原が混じり合ったような、不思議な香りだ。
彼が愛用しているこの香水瓶に気づいた時は、柄にもなくワクワクした。
初めての知識は、いつでも刺激的だ。
――どうせ気づかないだろう。自分の匂いなのだから。
頬杖をついたまま、ヒュンケルは口角を上げる。
「少しくらい」
素早く蓋を開け、銀色の一滴を耳の後ろに染み込ませて、ぱふっとベッドに腰かけた。
エンドウ
DOODLEお題:身長時間を気にせず書いてます。
第8回 身長 ラーヒュン1dr1wr「もうすぐだ」
ヒュンケルの案内で、ラーハルトは地底魔城の跡地へ向かっている。正確にはそのほど近くにあるという洞穴へだ。
火口の近くは草木の一本もなく、岩ばかりが薄い月明かりに照らされている。
「こんな所に本当に居るのか? 妖精が?」
「どうだろう。かなり昔のことだからな」
幼い日のヒュンケルはある夜、城を抜け出したのだそうだ。どうしても星というものが見たかったらしい。
「暗い空で無数にキラキラしていてな。夢中になった。するとそこへ妖精が現れたのだ。そいつもキラキラ光っていたから、オレはてっきり星のひとつが降りてきたのだと思った。それは先導するように低く飛び、洞穴へ入っていった。追いかけたら向こう側には別の世界が広がっていて、森だった。似たような光がたくさん居て、あれやこれやと話しかけられたのだが、オレは途中で泣いたのだろう。王と会うことになった。王は『イタズラ好きが君を連れてきてしまったから侘びに何でもひとつだけ叶えてやる』と言った。オレは父さんに会いたいと願った」
2116ヒュンケルの案内で、ラーハルトは地底魔城の跡地へ向かっている。正確にはそのほど近くにあるという洞穴へだ。
火口の近くは草木の一本もなく、岩ばかりが薄い月明かりに照らされている。
「こんな所に本当に居るのか? 妖精が?」
「どうだろう。かなり昔のことだからな」
幼い日のヒュンケルはある夜、城を抜け出したのだそうだ。どうしても星というものが見たかったらしい。
「暗い空で無数にキラキラしていてな。夢中になった。するとそこへ妖精が現れたのだ。そいつもキラキラ光っていたから、オレはてっきり星のひとつが降りてきたのだと思った。それは先導するように低く飛び、洞穴へ入っていった。追いかけたら向こう側には別の世界が広がっていて、森だった。似たような光がたくさん居て、あれやこれやと話しかけられたのだが、オレは途中で泣いたのだろう。王と会うことになった。王は『イタズラ好きが君を連れてきてしまったから侘びに何でもひとつだけ叶えてやる』と言った。オレは父さんに会いたいと願った」