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    Kan_Neko

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    #毎月2日はO2の日 参加小説です
    この作品に出てくるマザイは全て脳内より直で煮出している非公式・捏造設定です
    改めご了承ください

    ##O2Day

    ギョクト=アクアレギア「オツキン頼むっ、この通り!!!!」
    「お前ってそんな頭下げられたんだな」

    目の前には手を合わせたエクレアと、綺麗に清掃された器具たち
    「いや別に構わないんだけどさ」

    勝手知ったる様子で広げられる材料達を横目に一言

    「お前、不法侵入の癖いい加減直せよ……」
    じっとりとした目線で書き付けていたメモをクリップに挟み、取り合えずエクレアに体を向けた


    「いやね? 今度の満月に錬成しなけりゃいけないマザイがどうしても必要なのに外せない用事が入っちゃって」
    そんなことを言いつつエクレアが器具のチェックを始める

    「満月ってーと、【海底撈月かいていろうげつ】か【滿汐みちしおのせせらぎ】あたりか? 」
    「【玉兎ぎょくとの王水】だな」
    「あれ使う場面あんの……?」
    そんなことを言いつつ脳内で効能を思い出す
    王水とは名ばかりの、初心者でも作れる簡単な部類のマザイだ
    「あれ主な用途は製菓だろ」
    生地やベースとなるものに混ぜ込むことで材料同士が良く馴染み、風味も良くなるという料理よりの錬成だった筈
    副作用の足が少し早くなるのだってコイツには要らないしな……と少しばかりの思案を継ぎ足す

    「小金稼ぎでちょいちょい菓子とか小物作って売ったりしてるんだけどさ」
    「お前の資金源そこだったのかよ」
    時々見せて来る資金力はそこから来てたのかとこっそり納得する
    確かに金がなきゃ研究は出来ねぇし材料も買えないしな

    空っぽの金貨袋は振っても音が鳴らないだろ、なんてため息を付きながら反論される
    「今度実験で使いたいヤクがこれまた高くって高くって」
    「それで調子乗って仕事受けたら材料が足りなくなったってことか」
    「惜しい、計算では足りるはずだったんだが急に大口の仕事が入った」
    「受けてもいいけど頼み方ってもんがあるだろうがよ」
    頭をがりがり掻きながら足を組み、背もたれに身体を預けて脱力する

    「安心しなって、私はお前のやる気の出し方を心得てるんだからさ」
    ニヤリと笑い、袋から何かをだす
    「んだよ」
    椅子をがたがたとさせて遊ぶ

    「ここにお前が欲しがっていた各種鉱石詰め合わせのセットがある」
    「乗った」
    「つってもお前が作るよりは多分効能が落ちるぜ? 」
    なんてったってエクレール稲妻、材料を考えると俺より断然親和性は高い
    「それに関しては量で補うからあまり関係ない」
    「……この量だからいいけどさ、うん」

    明日の昼くらいに取りに来るとだけ言い残してさっさと去ってしまったエクレアと鉱石を片目にしかし、よどみない手つきで錬成準備を始めていた
    これでも錬金術師としての誇りがあるんだ、しっかりきっちり錬成して見せようじゃないか


    ピピピピ
    「ん、アラームか」
    作業に没頭していた脳に聞き慣れた電子音が響く
    考え事をしているとき、没頭しかけるがこの後予定があるときになんかこれは便利だ
    硬質なボタンを押して止め、あらかじめ用意しておいた器具を手に取る
    「っと、忘れてた」
    慌てて手を止め、カーテンをサラサラと開ける
    このマザイは月の光をいかに当てるかがキーポイントとなるため、カーテンで遮らず手元でしっかりと月光を当てる必要がある
    月の光が実験器具を反射している様子を見て、改めて皮製の手袋を嵌め直す

    と言っても、本当に楽なもので
    キンモクセイの葉を一枚刻んでビーカー四分の三の水に沈める
    レモンの果汁を大さじ一杯、混ぜ入れる
    シビレ珠を砕いて一かけ、そっと入れ
    炭酸のようにパチパチと弾けたら仕上げにガラス棒で攪拌
    左に三回、右に一回
    割るように混ぜたら後は埃対策の蓋を被せ、数時間月光に当てるだけ
    これを十と何回繰り返して量を確保する必要があるのが多少手間だが……

    「しかし、今日は本当に月が大きいな」
    ふと見た窓の外に浮かんでいる月をしみじみと眺める
    もう調合が終わったビーカーの色が徐々に黄色に染まっていくのを眺めながらそんなことを考えてしまう
    夜空にぽっかりと浮かぶ丸い月、まるでそこにだけある穴みたいだなんて
    自分らしくもなくそんなことを考えてしまうくらいには不思議と見つめてしまう、目が惹かれてしまう

    そんなことを考えている折に、最初の方に作っていた【玉兎の王水】が完成していたようだ
    ガラス棒を差し入れて感触を確認
    少しもたつくとろりとした黄色の液体
    月に透かすと僅かに青みがかる
    「久々だけどちゃんと出来たな」
    もう少し質が良いと微かに甘い香りが漂ってくるらしいが、錬成コストの関係で使ってはいないとのこと
    漏斗で瓶に詰め、ラベルを付けて完成だ


    ドンドンドンドン
    「……んぁ……? 」
    日差しが降り注ぐ中、激しく殴打する音で目が覚める

    「お~~いオツキン! 頼んでたやつ取りに来たぞ!! 」
    聞き覚えのある声に、のっそりと身を起こして応対する

    「それ……、ブツな」
    昨日作って瓶詰めしたものを指さし誘導する
    「サンキュー! 後でおすそ分け持ってくるわ」
    そういうや否や袋に詰めてとっとと持って行ってしまった
    相変わらず足早いな
    そんなことを思いながら、窓を開けて涼風で換気しようと起き支度を始めた

    後日届いたお裾分けには、この間の【玉兎の王水】を使ったのであろう砂糖菓子が入っていた
    何でも琥珀糖と言うらしく、添えてあったメモには
    『新作だ、良かったら味の感想頼む』
    と書いてあった
    見た目にも綺麗なそれにはキンモクセイの絵が描いてあり、手先の器用さと味にそれぞれ関心し直す
    今度アイツが来たら見た目と味に関するレポート出してやるか、なんて考えながら手元の紙とペンを走らせ、琥珀糖をもう一度齧り始めた
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