20話 葬儀も恙無く終わりを迎えようとしていた。
深く掘り開けられた大穴にヴァレンテが眠っている箱が下ろされ、跡形もなく土で埋まる頃には日は西の空へと沈みかけている。
夕日の橙光をうけきらきらと輝いている綺麗に作られた白い墓標は、歴戦の戦友達の隣に設置された。
事件の公開を控えられたお陰か彼女の死を悲しんだ人々が多く集まったが、日も落ちてきて1人、また1人と墓地を後にしていく。
墓の前に佇み、墓標に刻まれたヴァレンテの名前を見ていたカルヴェの背中を見ながら、シラーとヘルラの二人はどう声をかけようか悩んでいた。
仮にも裏切りを行っていたとはいえ、尊敬し、背中を追っていた人物の死は辛いものだろう。
「ぁ⋯あの⋯」
「あぁ、待ってくれ。まずは俺から今回のことへの感謝と謝罪を」
振り返った彼は頭を深々と下げ、最大の敬意を表すと、二人は慌てた様子でそれを止めに入る。
「あ、頭をあげてくださいカルヴェさん⋯!」
「そ、そうだよ!カルヴェさんも、今はお辛いだろうし⋯」
「すまない、正直まだ気持ちの整理が着いていなくてな⋯」
以前の様な厳しい面影はなくなっていた。今までの態度はヴァレンテを思っての行動だったのか今では定かではないが、悲しみにくれる彼の行動を攻める輩はいないだろう。
「俺がもう少し早くあの人の助けになれたなら変えられたのだろうか」
汚れ一つない綺麗な白い墓を見下ろし、零れ落ちた言葉にどう返せばいいか分からない2人はカルヴェの方を見た。
「⋯いや、わかってるんだ。どうにもならない事だったこと。⋯先輩の心は、あの日⋯あの時からずっと戦場に取り残されているんだ」
手に持っていた花と銀の輪を墓の前に備えたカルヴェはゆっくりと立ち上がり、シラー達の方へと向き直る。
「先輩は⋯優しい人だったんだ、他の人の為なら自分を犠牲にする慈愛に溢れた人だった。」
自身の自慢の上司を誇るように、眉を八の字に曲げながらカルヴェは笑う。
「俺はあの人の支えになりたかった、他の人と同じく救われた者としても、⋯惹かれたものとしても」
そう言ってカルヴェは手袋の取られた右手をシラーたちの方へと差し出した。
「俺は、先輩をこうしてしまった戦争を引き起こした魔女を捕まえたい。だから君達に協力する。」
差し出された手を見て、シラーとヘルラは一度お互いに顔を見合わせた。
言葉を交わさずとも、二人の意見は一致していたらしく、シラーは迷わずその手を握り返した。
「えぇ、お願いします」