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    Yotubainko

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    裏切り

    16話 宝飾の破壊後、今まで扉に魔法が掛けられていたらしく、流れ込むように聖騎士団の団員が入ってきた。
     皆それぞれ教皇猊下への忠誠心か、聖騎士の誇りからか、犯人の逮捕を息巻きながら入ってくるが、大聖堂内の惨状に加え拘束されている自身の上司を見てたじろいだ。
    「ヴァ⋯ヴァレンテ⋯団長が⋯?」
    「そんな⋯」
    「連れて行け」
    「しかし⋯!」
    「命令だ、連れて行け。」
     信じていた人の裏切りに自身の目を疑いその場で立ち止まってしまった彼らを見かね、カルヴェは上司として連行の指示を出す。
     正直、尊敬する人の連行など自分の意思でしたくない彼らにとって、その指示はどれほどありがたいのだろう。
     犯人の連行、そして教皇の安否を確認するなど、それぞれの役割へと奔走する彼らの様子を眺めながら、ようやく終わったのだとシラーの心に平穏が訪れていることに気がついた。
    「すまなかったな、ハーシェル。我々の事情に君たちを巻き込んだ。」
    「いえ、カルヴェさんも大変でしたね」
    「そうだよ!仕方ないよ」
    「ありがとう。君達も治療してもらうといい、あと数日間は事情聴取などあるだろうが協力をお願いする。」
     自身が一番怪我を負っているというのにシラー達を気遣うところを見ると、彼は皆が言うような性格では無いのかもしれないと思えてきた。
    「わかりました。⋯あの、ヴァレンテさんはどうなりますか?」
    「反逆罪は原則死刑だ。⋯だが、まだ分からない。勝手だとは思うが軍法会議で進言をするつもりだ。」
    「そうですか⋯」
    「刑が降りるまでは牢屋に入る予定だ。面会も出来ると思う」
     そこまで言ったカルヴェは部下からの呼び掛けに軽く返事を返した。
    「すまない、俺はこれからやらなければならないことがある。これで失礼する」
     こちらへ軽く声を掛け、部下の元へと歩いていったカルヴェの背中を見ていたシラー達に聖騎士団員が治療の声をかけてきた。
     ヴァレンテには沢山聞きたいことがある。落ち着くのを待ってから、先程言っていた面会に行くことにしよう。


     数日後、面会を許されたシラーは聖騎士団管轄の留置所へと訪れていた。
     ヘルラの怪我は少し酷かったようで、今は治療に専念してもらっている。
     冷たいレンガ製の面会室はものが少なく酷く殺風景だ。
     扉を開け、中に入れば仕切りの着いた壁を挟み、既にヴァレンテが座っていた。
     以前の様な毅然とした元気な様子はなく、恐ろしい程に落ち着いた様子で一瞬違う人物かと見紛う程だ。
     用意されていた椅子に腰を下ろせば視線を落としていたヴァレンテの目がこちらを向いた。
     白いシンプルなワンピースを着、眼帯は外されたらしく白く濁った瞳に創傷が痛々しく見える。戦争でつけた傷なのだろうか、とどこか現実離れした思考の中考えていればヴァレンテはシラーにニコリと笑いかけた。
    「気分を害してしまったかな、あまり見た目が良くないから眼帯をつけていたんだが、ここでは取らなければいけなくてね」
     こちらを気遣うように話しかけてくる様子は前と同じだ。姉のような、母のような優しい温かさがある。
    「この間はすまなかった」
    「い、いえ!やめてください頭をあげてください⋯」
     特に謝罪を求めている訳ではなかったシラーは慌ててヴァレンテに頭をあげるよう頼んだ。
     だが、尚も深々と頭を下げ続けるヴァレンテ。聖騎士団長としての面影はもうなく、今はただの一女性としてシラーの目には映る。
    「ヴァレンテさん」
     そう名前を呼べば彼女はようやく顔を上げた。
    「⋯ひとつ聞いてもいいか?」
     そう問いかけてきたヴァレンテにシラーは「えぇ」と肯定の返す。
    「どうして私が犯人だと分かったんだ?」
    「貴方の魔力痕が不自然になかったからです。最初の訓練の時に、お手合わせして頂いた時魔法を使っていらっしゃいましたよね?あの時、あなたの実力ならそもそも魔法を使わなくても良かったはず。それなのに貴方はまるで自分の魔力痕を私に覚えさせるように魔法を使っていた。そこで違和感を覚えた迄です。貴方は魔法がそもそも使えない。普段の生活の時も魔力痕が残ることを知らなかったんですよね」
    「そうか⋯そうだな。その通りだ」
    「それに、貴方はそもそも、自分が犯人である事を最初から隠してはいなかった」
     ヴァレンテの表情は変わらないまま、シラーは言葉を続ける。
    「ずっと思っていたんです。私達に戦い方を教えてくれたり、捜査の段階でヒントを与えたり。現に貴方はあの時、カルヴェさんや私たちに剣を振るっていたけど、致命傷はさけ、命を脅かすようなことはしなかった。」
     シラーの言葉にヴァレンテは否定をしなかった。ただ静かにその言葉を聞き続けているだけ。

    「貴方は、最初から自分が捕まることを望んでいたのでは?」

     一瞬、アルベロの目が見開かれた気がした。
    「⋯あぁ、正解だ。私は誰も傷つけたくはなかったし、誰かが私のせいで逮捕になっても欲しくはなかった。⋯でも、あの人を殺したかったのも本心だとも。」
     ようやく開いたヴァレンテの言葉にシラーは椅子を前引き直す。

    「理由、聞いてもいいですか」
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