(仮)お江戸でパラディ──────────────
「そらもう逃げられないぜ」利葉偉は相手を後ろ手に押さえつけた。
「はなせっ」
「おっとジタバタするんじゃねえよ。いいから顔見せな」逃げられないようにどっしり乗り掛かり、腕を片手で拘束して顎をつかんでこちらに向かせる。乱れた前髪からきっ、と睨みつける目は中々に力がある。
「ほう。女姿の時はなよっとしてたがなかなかいいツラじゃねぇか」
悔しそうに歯を噛み締める弁天小僧をよそに、好色な笑みを浮かべながら利葉偉は弁天小僧の腰を掴んで引き寄せた。
ふと感じた違和感に、次の瞬間小僧の着物の襟を乱暴に掴みはだけさす。
そこには目も眩むような白い肌にきっちり撒かれた晒しがあった。
「てめぇ……女か」
撫でた腰は予想通りの細さだったが指に沿う腰が、尻が、えも言われぬ柔らかさと滑らかな弧を伝えてきたのだ。
(通りで……女着物に違和感がねぇと思ったんだ。背が高ぇから騙されちまった)
言われて女は開き直り、嘲けるような表情で話だした。
「ふん、女だったからってなんだってぇのさ」
利葉偉は押し黙った。
「ああ、勃つもんもたたなくなっちまったかい?
〇〇屋(盗賊の一味の屋号、後で考える)の利葉偉は百人斬りの色男だと評判だけど、お相手はみぃんな美少年だと言うじゃないか。おあいにくだったね」
当てが外れたのが愉快で堪らないとでも言うような弁天小僧の態度が全く面白くない。どっちにしろ押さえ込んでるこっちが有利なんだ。利葉偉は「ふん……まあここの作りはどっちでも一緒だろ」と言う、とおとがいを掴んで小僧を引き寄せ、その唇に吸い付けた。
「ンッ」声にならない声をあげて弁天小僧は逃れようと暴れるが利葉偉はびくともしない。悠々と開いてる口に舌を差し入れた。歯、頬、舌と順に確かめていくがいつもと勝手が違うのを利葉偉は感じていた。
(小せぇ)
それぞれが本当にそこにあるものなのか夢中で探っているうちに相手の漏らす息が何やら艶かしくなってくる。
「……ふっ」
その声に利葉偉は薄目を開けて小僧の顔を盗み見た。眉を顰めて利葉偉の舌に耐えようとしている表情が利葉偉の我知らぬ感情を煽る。
(くそっ、百人斬りの二つ名は伊達じゃねえぞ)
更なる道への扉を開かんと本腰を入れようとしたその時、気がつくと弁天小僧は利葉偉の腕からすり抜けてしまった。口付けに夢中で押さえつけがお留守になってたらしい。慌てて追いかけるも弁天小僧はくるりとトンボを切ってあっという間に手の届かないところまで逃れてしまった。
鮮やかな身のこなしに悔しく思いながらも何か小気味良さを感じて利葉偉は怒鳴った。
「おい!お前名前はなんてぇんだ!」
弁天小僧はくるりと振り返り、もう利葉偉が追ってこないと分かるとにやっと笑って叫び返した。
「判治だよ!」
「はんじだと?男みたいな名じゃねえか」
「いいんだよ男で!じゃあね!」
そう言うと弁天小僧判治は振り返りもせず姿を消した。
(……ふん。まあ女なんざどうでもいい)
利葉偉は口元を拭いながら強がった。この先判治と切っても切れぬ仲になるとは未だ思いも寄らない利葉偉だった。
(了)
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こんな感じで思いついたシーンだけなら放り込んでいけるかも。まず弁天小僧のお話を勉強しないと💦もう既に全く違うものになってたりして。リヴァイにあたる役が何なのかもわかっていないという体たらく。リヴァハンもそれぞれ何て呼んだらいいのだろうか?