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    こらもう長くなりますわ。江戸パロリヴァハン。(もう歌舞伎とは言えない……)

    (仮)お江戸でパラディ 折りからの風は強いままで、ここらの平たい土地を吹き抜けている。判治は鬢の毛を乱しながらまた先に立って歩いていたが風の音で話もままならぬせいか、ひょいと脇の竹藪に続く道にそれた。入っていくと強い風が薮全体を揺らしていたが、前も後ろも竹林、となると葉擦れの音は均質になりむしろ藪の外とは隔たれた世界の趣きである。

    「今日俺から逃げなかったのは何でだ?」判治が脚を緩めたので利葉偉は追いついて聞いた。単にタカリたかっただけなら泣けるな。
    「弁天小僧が実は女だった、なんて噂は立っていないよね」判治は足を止めてゆっくりと振り返る。「利葉偉はそういうの言いふらしたりしなさそうだけど、一応口止めしとこうと思ってね」
    「口止めか……嫌だと言ったら?」利葉偉は恵榴瓶に言ったのは勘定には入れない事にした。
    「んー蝶沙楼の利葉偉が昼間は町で泥棒まがいのことをしている、って噂が出回るかな」
     少々面倒だな、と思いつつ利葉偉は反応せず判治の意味ありげな目を見返す。判治は得意げに続けた。
    「弁天小僧が、利葉偉とはよく商家の天井裏で会っててね……って言うとなかなか説得力あるだろ?評判通りのいい男だった、って付け足しといたら噂千里を走る、だ」

     吉原で名高い妓楼の蝶沙楼は、花魁に飽き足らず禿や遣手婆、役者のような顔の下足番から利葉偉請け負う用心棒まで、似姿が巷に出回っている。それらを登場人物とした洒落本(遊里を舞台とした短編小説)や黄表紙(漫画)まであるのだ。「百人斬りの利葉偉」はそう言った姿絵につけられる見出しだった。弁天小僧が言ったとなれば、それはそれは読み手達の想像を煽るだろう。

    「てめぇ、この間なんで俺だとわかった」あのとき判治は、女とわかって黙り込んでしまった利葉偉に対し、姿絵の見出しを持ち出して切り返してきた。
     判治はおかしそうに破顔すると言った。
    「蝶沙楼の利葉偉は本当はチビなんだ、ってのは裏稼業の人間には知れた話だ。加えて姿絵通りの花のかんばせ、男好きと来たらね」

     洒落本の版元は勝手に儲けているわけではない。墨須が入れ知恵をして、町衆達の憧れを煽っているのだ。人情本(女性向け小説)に対抗するため、利葉偉の容姿は盛られ磨かれ、あまつさえ身の丈六尺(約181センチ)の美丈夫ということになっている。お陰で利葉偉は江戸の市中を歩けるのだが。

     利葉偉はため息をついた。泥棒と思われるのは確かに困るが、それより弁天小僧と絡めて噂になるのはしちめんどくさい。何より恵榴瓶が面白がってその路線の人情本を売り出しかねない。

    「また逢引してくれるならいいぜ、黙っててやる」今度は利葉偉が意味ありげに判治を見た。
    「逢引って……」といってまた判治は顔を赤らめる。
    「今日みたいに何もしないなら良いけど。この間みたいなのじゃなくてさ……いきなり呂の字(キス:口と口、ってことで江戸時代の表現の一種だそうで使ってみたかった!)だなんて」
    「は、呂の字?何ぬるいこと言ってやがる」
     利葉偉はあっという間に判治の腕を取り腰を引き寄せ少しのためらいもなく判治の口に吸いつけた。

    (ああ……これだ。この柔らかさ、匂い。野郎とは違う……)

    「……ッ!離、しィ!」
     逃れようとする判治を道の端に押しやり、薮の土手を少し降りて太い竹がすっくと立つのに背を預ける。しなりを利用して判治ごと脚で囲む。大勢を崩された判治は逃げることが出来ない。手が空いた利葉偉は肩から背中、背中から腰、腰からその下の丸みへと遠慮なく手を這わせた。判治は両の手で利葉偉を押し退けようとしているがびくともしない。利葉偉は衽(おくみ:前身頃の端についている細長い布の部分)を掴んではだけさせ、直に腿に触れた。襟を引き下ろし、現れた目にも鮮やかな波に桜の彫り物に唇を泳がせていく。

    「利葉偉、やめろ!」
     判治が言うのも意に介さず、首から肩、鎖骨に指を這わせてきつく巻かれた胸元のサラシに指を掛ける。途端に悲鳴のような判治の声がする。

    「馬鹿馬鹿、生娘相手にひどいよ!」
    「は?」

     利葉偉は耳を疑った。
     江ノ島弁財天のお稚児あがり、弁天小僧の異名を取るものがおぼこだと?

     流石に意表を突かれて利葉偉が動けないでいると判治はズルズルとしゃがみこみ、涙目になって叫ぶ。
    「利葉偉は男が好きなんだろ!百人斬りはただの煽り文句じゃない、ほんとに何人も念弟がいるって知ってるんだから!」そういうとぼろぼろ涙をこぼし出した。慌てて利葉偉もしゃがんで目線を合わせ、宥めるように言い聞かせる。

    「そいつらは切った。全員だ」
    「ほ、ほんと?」

     頬が赤く染まり、髪も乱れて少し幼く見えるのが可愛らしい。どこから見ても女だ。まだ手も出していない女に何故慌てて言い訳をしなければならないのか、と少し頭をよぎった利葉偉だったが世の知らない弁天小僧の愛らしさがもたらす優越感でもはやどうでも良くなった。

     少し頭の冷えた利葉偉は乱れた姿の判治を改めて見る。上も下もはだけて、腿の白さは特に目に毒だった。大事なところが見えない姿は返って扇情的だが、涙で濡れた頬と張り付いた髪、呆然とする眼は、それが己のしたことの結果である事を思うと褒められたものでははない。
     お稚児上がりと言うのも単なる方便だし、盗賊の親方に言われて男として振る舞っているのも女の部分を大事にされたからだ。こいつは売り飛ばされてきた遊女とは違う。

     利葉偉は判治の着物の襟を揃え、裾も引いて直し始めた。判治は大人しく、あるいは呆然としたまま利葉偉の動きを見ている。
    「お前、歳はいくつだ?」
    「十六……」
     
     廓なら遅くとも水揚げする年頃だ。孫ほど歳の離れた振袖新造相手に手を挙げる客の男たちをおぞましく思っていたがなんのことはない、利葉偉も己に巣食う昏い欲望に気付いて、自分も奴らと変わらない、と自嘲した。自分が見つけた可憐に咲く野の花をこの手で手折って自分のものにしたい、艶やかな花びらが空に舞うように激しく踏み散らしたい。なるほどあれはお大尽の遊びだぜ。

     利葉偉は着物を整え終え、髪の乱れも直してやると指の背で頬を撫でながら囁いた。
    「悪かった。お前の嫌がることはもうしない」
    「うん……」
    「ちゃんとしたとこならいいか?」
    「え?」
    「妬いて泣くぐらいだ、お前もまんざらでもないんだろ」他にもいい人がいるんだろ、と泣くのは定番の手管だ。判治は素だろうが、効き目があるから手管になる。生を受けた場所でいやと言うほど男女の駆け引きを見ていた利葉偉は確信を持って言った。こいつはただ嫌がって泣いてたんじゃない。
     果たして、判治は目を逸らし、小さな声で言う。
    「そりゃ、また利葉偉に逢いたいと思ったし、ほんとは口止めじゃなくて、黙っていてくれたお礼を言おうと思ってたんだ」
     それを聞いて利葉偉はすっかり嬉しくなり、まだ判治の目に溜まっている涙を口で吸い取ってから耳に口寄せて囁いた。

    「じゃあやっぱり不忍だ」

    (続く)

    ───────────────────

     刺青のことをすっかり忘れていて今回唐突に入れましたが、肩脱ぎにするとサラシ見えちゃうね?女だって丸わかりじゃん。弁天小僧判治は袖をまくるだけにしよう……。
     カッコ内はだいたい検索結果で私も初めて知ったことです。あらゆる手を使って無理矢理江戸風にする!(何を目指してるのかわからなくなってきた)出会茶屋のことなんか全く知らないよ!
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    Replies from the creator

    _yobachi

    SPOILER進撃ミュの感想を吐き出してます。
    みゅの感想。元々ミュージカルは苦手、ララランドでさえちょっと……という人間が書いたものです。そうはいっても現地一回行って配信二日買って通しで二回見てNoNをエンドレスリピートはしてます。箇条書きの感想は前後しちゃってます。全て役名で失礼します。


    ・兵長スーッと登場しすぎ
    ・カルラさんの歌は感情の乗り方が圧倒的でした。伝わる上にうまいというか。
    ・「駆逐してやる」、なんで「巨人を」って言わないのかなと思ったら原作でも言ってなかった。駆逐対象が必ずしも巨人ではない事を示唆してるのかと思ったけど考えすぎか。
    ・ついでにパラパラと原作見たけど、セリフはほとんど忠実に再現してた。
    ・アルミン女の子座り出来るの?私出来ないよ?
    ・生身で向き合ってる二人見てあー最初からこれエレミカですやん、エレミカのお話ですやん、って思った。そうやって普段の生活の中で二人でいろんなこと話しあってきたんだよね。先生ずるいよね、全くそんな伏線張らずにいきなりあそこで出してきたけど普通そんなことやらない。えっそうだったの?って思わせたかった、やりたい表現の一つだったんだろうけどほんまズルい。残酷な世界を歌うミカサ美しかった。佇まいもお顔もまんまミカサ。
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