滑り込みジュンブラガヴィ司割れたステンドグラスから射し込む陽光。
一歩進む毎に、軋んだ音を鳴らす木製の床。
誰も列席していない、朽ち果てた座椅子。
そんなもの達が、私達の門出を祝う全てだった。
「……本当に、これで良かったのか?」
それぞれ用意したスーツに身を包み、来る途中の花屋で買った花束を抱え、彼は苦笑する。
確かに、折角の挙式なのだから、もう少しましな場所を見繕えば良かったろうか。
「それもあるが……普通の奴を選んでたなら、そもそもこんな事せず、普通に幸せになれたんじゃないのか」
ステンドグラスを抜けた色とりどりの陽光が、俯いた彼に影を落とす。
「普通に働いて結婚して、色んな奴に祝福される……そんな人生を、俺はあんたから奪っちまった」
何を言っているのだろう。誰から祝福されようと、其処に貴方が居なければ意味は無いのに。一番大切なものを諦めた先にある幸福など要らない。私は己の意志で、貴方の傍らに在ると誓ったのだから。
そんな想いを込め、誓いを灯した左手で、同じく誓いの証を嵌めた彼の手を取る。
光を受けた蛋白石の双眸は、色硝子にも劣らぬ目映さを湛えていた。