嫌い嫌いも好きのうち「愛弟子〜!」
「………」
ぎゅうぎゅうと愛弟子を腕に閉じ込めれば、腕の中から小さく溜息が聞こえた。
「いい加減、弟子離れして下さいよ」
「だって!愛しい弟子と書いて愛弟子だよ!?」
「答えになってませんよ」
「愛弟子冷たぁい!」
おちゃらけて言えば、愛弟子は冷ややかな視線を向ける。
「愛弟子…俺の事、嫌いになっちゃった?」
「……嫌いです」
小さい頃は俺の後ろをちょこちょこと付いてきて、それはそれは可愛かった。
ハンターになると決めてからも、ハツラツと笑い、泣き、驚き、くるくると変わる表情が愛らしかった。
上位ハンターになってから、少しずつ距離ができ始め、あの時と変わらない澄んだ目は、いつしか冷たく俺を見つめるようになった。
「ははっ…そりゃそうか。もう一人前になったし、いつまでも俺が纏わりついてちゃ鬱陶しいよね。…ゴメン」
ハッキリと、言葉にされると胸が抉られたように痛む。
俺はいつしか彼女に愛弟子以上の感情を向けていたようだ。
「誰にでもニコニコ愛想がよくて優しくて黙ってりゃ格好いい教官が嫌い」
そうだよな。
嫌いだよな。
じわり涙が滲んできちゃったよ。
なんて思っていたら、今なんて言った?格好いいとか?ん?
「……ん?」
聞き間違いか?と思っている俺を他所に、愛弟子は続ける。
「きゃあきゃあ言い寄られてヘラヘラ笑ってる教官なんて嫌い」
「…んん?」
ヘラヘラしてたかなぁ?
女性にあまりキツい言葉をかけるのも何だし…と、やんわりと断っていたけど、よくなかったのかな?
「…私だけの教官じゃない教官なんて…嫌い」
「へ?」
そっぽ向いた顔の表情は分からないけれども、愛弟子の耳は真っ赤だ。
それって、つまり、愛弟子だけの俺は好きってこと??
それって、ヤキモチってこと??
「愛弟子。こっち向いて」
「や」
「愛弟子だけの俺、いらない?」
「………いる」
「おいで」
「俺の全部、愛弟子のものだよ」
「……」
「俺のこと嫌い?」
「………きらい」
「ええっ!?」
愛弟子の口の端が少し上がってる。
「…ねぇ、愛弟子。言って?お願い」
艶やかに彩られた唇が形を変えた。
「だ ぁ い す き」