人の気も知らないで壊したかった。
今までの関係を。
「好きです」
もう、その関係に満足は出来なかった。
溢れ出す感情を口に出した。
もう腹の中は焦がれて焼き爛れて、外に出す事以外、思いつかなかった。
「俺もだよ!愛弟子、」
そうじゃない。
私が欲しいのは、それじゃない。
「そうじゃなくて!私は、異性として…」
見つめた瞳は確かに同じ熱があるのに。
「……すまない」
彼の口から出たのは、全く違う言葉だった。
「キミの、その想いに応える事は出来ない」
「キミの事は妹のように思ってるよ」
「恋情は…ないんだよ」
まるで自分に言い聞かせるように紡がれる言葉の羅列に、腹が立って仕方がなかった。
「愛弟子?居るか、ぃ!?」
「何ですか?」
「ま、愛弟子!!?」
ポタリポタリ、と髪から滴が垂れる。
慌てる教官を横目に、手拭いで髪を拭いた。
「服!服着て!!」
「ハッ!何、慌ててるんですか?」
思いの外、苛立った声が出た。
だって、私は家族なんでしょ?
妹なんでしょ?
「何も感じないんでしょ?妹ですから?」
「……」
顔を見れなくて、見たくもなくて。
私の顔も見せたくなくて。
教官に背を向ける。
「気にしないで下さいよ」
声が、少し震えていたのは、怒りなのか、それとも悲しみなのか。
インナーに腕を通す。
「…はぁ…、人の気も知らないで…」
どの口が言うのか。
カッと、一気に頭に血が上った。
「教官だって」
人の気も知らないで。
これまで通り?
いつも通り?
出来る訳がない。
それを壊したくて、想いを告げたのに?
「家族の愛なんて要らないんですよ」
私が欲しいのは、それじゃない。
偽物の言葉なんて要らない。
偽りの愛なんて要らない。
「私が欲しいのは、唯一無二の愛なんですよ」
貴方の本当が欲しい。
教官の建前なんて知った事か。
私を愛してると目で告げるのならば、その隠した口布を取り去って。
その口で、私だけを愛してると言って。