呼び名信頼しているし、信用もしている。
尊敬はしてない。
が、愛してはいる。
この憎らしいくらいに美しい人。
イカれてはいるが、マトモだとも言える。
ふざけた遊びを提案し、どうにか私を振り向かせようとしている。
何とも滑稽で、愛らしい。
世界に愛されているのに愛され慣れていない。
何とも愛おしい恋人。
「七海」
へらり、と軽薄そうに笑う。
その瞳の奥には、ゆらりと揺れる不安。
「何読んでんの?」
本と私の間に体を滑り込ませて座る。
私が拒まないと、怒らないと解ってる。
「ちょっと…見えませんよ」
「見えなくしてるんだもん」
「いい大人が「だもん」とか
言わないでください」
「ナナミンって呼ばれた方が嬉しい?」
「お好きなように」
「ナナミン〜」
「……」
「七海ー」
「はい。何ですか」
「建人」
オマケに嫉妬深い。
どうせなら、ちゃんと呼んで下さいよ。
読んでいた本を閉じた。
「これで、満足ですか?」
貴方には名前で呼ばれたい。
満足そうに笑う口にキスをした。