Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    いしえ

    @e_ihs_i

    新規の文章と絵などの公開をこちらに移動。
    最近はコとか封神とか。
    そのほか、過去にしぶに投稿したものの一部もたまに載せたり。
    幽白は過去ログ+最近のをだいたい載せています。
    ご反応、めちゃめちゃ励みになってます!! ありがとうございます~!!

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 🙌 🎇 🎆
    POIPOI 54

    いしえ

    ☆quiet follow

    しぶから再掲。登場当初のロペスは作中で無欲と扱われていたけれど、実のところ彼にとってみれば、王に仕えたいというその願いが持つ意味がすご~~~~~~~く重かったんだよねぇ!!!!!というのと、それをだれもしらないんだよね!!!っていうのが最高で…無欲そうに見えるロペスが大願を成就させているところ本当に好き…という気持ちを、ロペス一人称文で少しアウトプットしたもの。巨大感情隠した従者のイデアで理想です

    #マルティン・ロペス
    #アルカサル
    #青池保子
    #青池作品

    ここに、在るは幸運がため/マルティン・ロペス(アルカサル) 「なんとまあ、欲の無い男だ」。諸侯らが口々に、私を謙虚と褒めそやす。厳しい審判の眼を持つ王さえ、私をそう、賛美なさる。誰もが、ご存じないのだ。その実私が、生涯をおいてもあるいは遠く及び得なかったかもしれぬ大願を、既にこの双肩に得たのだと。十六の少年が、不意の家督において心のささえにしたカスティリア国王、十五で即位したかつての少年ドン・ペドロ王そのひとのお側近く仕えるその至上を、その幸運を! それこそが、私の何よりの強い願望で、悲願で、意欲で、目標だったことを。誰もが、ご存じないのだ。
    「恐れながら――」
     王の取り計らい、即ちサバ読みに応じたのも、お側仕えの夢を快く受け入れてくださった主君への、王のご厚意への、誠意だと思ったからにほかならない。たとえば神がこの方便をとがめたとても、私はそれを、恐るるまい。ドン・ペドロ王そのひとに、そのお心に適うのなら、私は地獄も恐れはしない。
     私の家柄は、格としては、さほど高くない。堅実に、誠実に、かの王の統べるこのカスティリアで城の秩序維持に努める。それは、たとえ王の傍で奉仕するより遠回りだとても、王に直接、枝葉で奉仕できるという誇りだった。カスティリアの、ドン・ペドロ王の統治するこの国の騎士である。それが、私の誇りのすべてだ。だから、あの城での騎士道に反する事件には、心底憤慨した。そうだ、私を戦い得させたのはすべて、かの王へと奉仕している誇りだ。それゆえの、憤りだ。私は冷静を努め、事態に対処した。そして窮地。そのとき、ああ、命運尽きたかに思えたそのときに、かのかたそのひとが降り立とうとは誰もが、ゆめゆめ思うまい。急場は、身に余る幸運をもって我々を救い、そして私の、誇りを護った。私は、かの王に幾度にも、護られたのだ。途方に暮れた、十六のあの日。それから幾度も、心のか細くなりかけるときにも、健やかなるときも、常に王に、その存在にこころを、この誇りを、私自身の存在を、護られてきたのだ。そして――遠く夢見た、夢見続けてきた大願、お側での直接奉仕。運がよければいつかあるいは、と、そう心の糧にし日々の努めに励んできたその目標、夢さえもが、王によって知らずと庇護されようとは、ああ、まるで夢見心地だ。これがたとえば夢だとて、この白昼を糧に、どんな苦難にさえも耐えよう。そしてこれは、少しのぼせそうな頬に密かに感じる風の示す通り、間違いなく現実だ。私は、今、夢見た世界に立っている。この両足で、間違いなく立っているのだ。肩を親しみでお叩きになったてのひらが、未だそれを、現実じみさせない。だというのに私は、これを現実と知っている。自身の右掌をぼうと見つめて、ぐっ、ぱ、と、少し感触を確認する。掴んだものは間違いなくただの空気ではなく、王の剣たる騎士の誇りだった。ふとももの輪郭を装備越しに確かめてみても、遠く見た目標が現実味を実感させるばかり。ああ、そうだ、間違いなくこれは現実なのだ! ぼう、と、視界がおぼろぐことを私は惜しみ、自身にゆるさない。ふるり、ちいさくゆする栗毛が、頬を撫ぜるのがやはり、現実なのだった。
    「――マルティン・ロペス。こちらへ来い、見せたいものがある」
     ああ、鼓膜さえ夢のように甘くゆするこの高貴なる崇高が、心底愉快そうに、あどけなく、親しみをもってこの名を、確かに呼ぶのだ。私は今、十六のあの日から夢見た世界に、この王ただひとりの統べるべき地に、確かに、居る。ずっと踏みしめていたはずの土さえ、石畳さえ、その地の枝葉と根幹との差異を、知らしめる。あのころの私よ、ドン・ペドロ王の統べる地は、このような感触をしているのだ。温度を、芳香を、色彩をしているのだ。身をもって、終生、知るがいい――
     それから私は王命を幾つともなく受け、そのたびにほとんどすべて、実行した。…ただひとかただけが、刑の実行前に天寿を全うする。その、罪の重さは私のせいだった。その事実が私を地の底奥底へと這いずらせ、己を虚しくさせる。僧院でのお勤めでも、私の罪はあがなわれ得ないだろう。解っていても、私は、僧院にこもらずにおれなかった。ただひとりの私の君主、ドン・ペドロ王そのひと自身が、迎えに来て下さったからこそお側仕えに戻った。戦が、始まるから戻った。己を赦すことは決してない。これは私の、十字架だ。それでも私は、この主君のもとで仕えると、決めたあの日からこころをかえていないのだ。だから私は、ここに、在る。
    「私の場合、幸運でした」
     新しい騎士団長の自慢話を聞き流しながら、私は、確かめる。私がここに在るのは、この心を誓った主君のため、この幸運のため、そのためだ。私がここに在るのは、この主君に誓った心のため、この幸運のため、そのためなのだ。私は、本当に、幸運だったのだ。側仕えの幸運は、幾多の苦難さえ、この身に現実刻む。王の進む道に従える、その幸運がもたらすものなら、いかような困難さえも、私は受け入れよう。その幸運がもたらすものなら、いかような波乱さえも、私は共に行こう。それが、私の、騎士として選んだ道なのだから。
     十六の少年は、今頃、笑みを浮かべている。





    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    いしえ

    DONE▼聞仲さまの教育方針=生き様について(ミュ2の話も少しある)(朱聞要素と、途中から飛虎聞とある)
    ▼ミュの飛虎と聞仲について(たぶんCPではない)
    後者はCPではないものの、ともにミュに関する色が強いのでまとめました。
    封神考察とメモ集2(①朱聞要素と、途中から飛虎聞②たぶんCPではない)▼聞仲さまの教育方針=生き様について(ミュ2の話も少しある)(朱聞要素と、途中から飛虎聞とある)▼


     王として生きることは、王として死ぬこと。血族を残し、場合によっては殷のために殉死することで、長期的視野での“殷”全体、即ち殷王国の存続のバトンをつなぐこと。それが王太子の地位に生まれた者の責務である、というのが聞太師の教育でまず刷り込まれることだと考える。
     これは朱氏に子=殷の存続を託されたときから無意識に掲げていて、聞仲さまの潜在意識にあったことで、そして、仙道としての生が意識的に冷酷にさせた、個々の人間生へのまなざしだと思う。聞太師に直接託された“新たな殷王”は、朱妃の子個人のみでなく、半永久的に続くべき、“今後のあらゆる殷王という可能性”なのだった。聞仲はそれをじゅうじゅう承知して、次々に代替わりせざるを得ない人間生を、受け入れるしかなかった。
    3925

    いしえ

    DONE▼三強ベルばら論
    ▼趙公明の"独演・ベルサイユのばら"論 ――三強ベルばら論Ⅱとしての加筆事項
    ▼呂岳考 ――呂岳とその周辺に関する一つの説
    ▼飛刀について・余化や飛虎について
    ▼WJ封神読み返し時の考察&推測とメモ
    そのほかCP色強めのもの(+ミュの話)を別投稿にて。
    封神演義考察ログ集1(大半CP無、一部趙呂等含む)▼三強ベルばら論▼


    趙公明の立ち居振る舞いオスカルっぽいという話めちゃめちゃわかる~~と思ったあと、というか趙公明ってベルばらの三主人公の要素全部混ぜ混ぜだな!?と思ったり、三強もベルばら三主人公の要素割り振られ受け持ってるな~と思った、という話。

    ベルばらは主人公が三人(マリー・アントワネット、マリーと惹かれ合うフェルゼン、そしてオスカル)でマリーとフェルゼンの禁断の恋が王権を破滅に導く。

    妲己がマリーはセリフ引用+役どころで自明。趙公明の「バラのさだめに生まれた」はベルばらOP引用で、歌詞めちゃめちゃ趙公明すぎる曲よね…アニメはオスカルメインゆえ、趙公明がアニメベルばらOPモチーフ+仏王家紋章のユリ(厳密にはアイリスの仲間)の意匠に金と青の配色+髪型もオスカル意識のふわふわ金髪、かな?と。ただ、趙公明と妲己に共通するのが、マリーが取り巻きのそそのかしや恋により悪政へと向かった、外因により造られたれ"マリー"であるのを踏まえると、二人とも見せかけの言動は"マリー"な点。一方、素朴だった頃のかつてのマリーが蘇妲己。
    13541

    いしえ

    PASTしぶから再掲。登場当初のロペスは作中で無欲と扱われていたけれど、実のところ彼にとってみれば、王に仕えたいというその願いが持つ意味がすご~~~~~~~く重かったんだよねぇ!!!!!というのと、それをだれもしらないんだよね!!!っていうのが最高で…無欲そうに見えるロペスが大願を成就させているところ本当に好き…という気持ちを、ロペス一人称文で少しアウトプットしたもの。巨大感情隠した従者のイデアで理想です
    ここに、在るは幸運がため/マルティン・ロペス(アルカサル) 「なんとまあ、欲の無い男だ」。諸侯らが口々に、私を謙虚と褒めそやす。厳しい審判の眼を持つ王さえ、私をそう、賛美なさる。誰もが、ご存じないのだ。その実私が、生涯をおいてもあるいは遠く及び得なかったかもしれぬ大願を、既にこの双肩に得たのだと。十六の少年が、不意の家督において心のささえにしたカスティリア国王、十五で即位したかつての少年ドン・ペドロ王そのひとのお側近く仕えるその至上を、その幸運を! それこそが、私の何よりの強い願望で、悲願で、意欲で、目標だったことを。誰もが、ご存じないのだ。
    「恐れながら――」
     王の取り計らい、即ちサバ読みに応じたのも、お側仕えの夢を快く受け入れてくださった主君への、王のご厚意への、誠意だと思ったからにほかならない。たとえば神がこの方便をとがめたとても、私はそれを、恐るるまい。ドン・ペドロ王そのひとに、そのお心に適うのなら、私は地獄も恐れはしない。
    2121

    related works

    いしえ

    PASTしぶから再掲。登場当初のロペスは作中で無欲と扱われていたけれど、実のところ彼にとってみれば、王に仕えたいというその願いが持つ意味がすご~~~~~~~く重かったんだよねぇ!!!!!というのと、それをだれもしらないんだよね!!!っていうのが最高で…無欲そうに見えるロペスが大願を成就させているところ本当に好き…という気持ちを、ロペス一人称文で少しアウトプットしたもの。巨大感情隠した従者のイデアで理想です
    ここに、在るは幸運がため/マルティン・ロペス(アルカサル) 「なんとまあ、欲の無い男だ」。諸侯らが口々に、私を謙虚と褒めそやす。厳しい審判の眼を持つ王さえ、私をそう、賛美なさる。誰もが、ご存じないのだ。その実私が、生涯をおいてもあるいは遠く及び得なかったかもしれぬ大願を、既にこの双肩に得たのだと。十六の少年が、不意の家督において心のささえにしたカスティリア国王、十五で即位したかつての少年ドン・ペドロ王そのひとのお側近く仕えるその至上を、その幸運を! それこそが、私の何よりの強い願望で、悲願で、意欲で、目標だったことを。誰もが、ご存じないのだ。
    「恐れながら――」
     王の取り計らい、即ちサバ読みに応じたのも、お側仕えの夢を快く受け入れてくださった主君への、王のご厚意への、誠意だと思ったからにほかならない。たとえば神がこの方便をとがめたとても、私はそれを、恐るるまい。ドン・ペドロ王そのひとに、そのお心に適うのなら、私は地獄も恐れはしない。
    2121

    recommended works