秋の終わりは寒いから(レイマリ)「痛ぁっ」
神社の縁側でウトウトしていた私は大きな落下音と共に地面に叩き落とされた。
「え、ちょっとどうしたの」
部屋の中で机に肘をついていた霊夢は私の声に驚いて私が落ちた辺りを身を乗り出して見ていた。
そもそも私が落ちたのは、日が傾き、縁側に当たっていた日が端っこの方に行ってしまったのでそれを追いかけるように端っこに転がってウトウトしてたからなのだが。
そのことを服についた砂を払いながら霊夢に伝えると、馬鹿なんじゃないのと笑われてしまった。
しょうがないじゃないか。日が当たってないと寒いんだから。
「そんなに寒いなら部屋の中に入ればいいのに」
「部屋の中も寒いじゃん」
起き上がりながらそう返す。
私は今縁側より低い位置にいるので縁側に立ってる霊夢に見下されてるような形でいい気はしないのでさっさと縁側によじのぼることにした。
地面に叩きつけられた背中がまだ少し痛い。
「八卦炉は」
「忘れた……」
はぁ、と霊夢が大袈裟に溜息を吐いた。
「どうしたもんかねぇ……あんたの寒がりは今に始まったことじゃないけど」
本気に悩んでくれてるわけでもなさそうな態度で、とりあえずこれでも羽織っときなさい、と霊夢がいつも冬に着ている羽織りを投げつけてきた。
「あ、ありがと……」
「おゆはんは暖まるものがいいかしらね」
霊夢はそう言いながら台所の方に向かったようだった。
……寒い。
開きっぱなしの扉から入ってくる風が冷たくて、しっかり羽織っても隙間から入ってくる。
閉めるか、と立ち上がり扉に手を掛けぱたん、と閉める。
これで冷たい風に悩むことは無さそうだ。
「ねえ、あんた生姜食べれたっけ」
台所の方からそう声を掛けられた。
別に生姜は食べれるが。
「食べれるけど」
「じゃあ入れとくね」
そう言うと霊夢は生姜を切り刻み始めた。
規則的な音が響く。
なんでこんなに寒いんだろうか。
妖精か下等妖怪かなんかが悪戯でもしてるのだろうか。
私が寒がりなだけだとは思うが。
まだ秋だからって舐めてたからこんなことになったんだろうが、それにしても寒すぎる気がする。
「はい、おまちどお」
声がした方に目を向けると、湯気が立ち上る器を机に置いている霊夢がいた。
「ん、ありがと」
「生姜入れたから、少しは暖まると思うのだけど」
そう言いながら霊夢が腰を下ろす。
私も机に向かって食べることにした。
ほろほろに煮込んだ鶏肉が柔らかくて美味しい。
スープを啜ると体の芯から暖まった感じがする。
「美味しい」
「うん、美味しい」
良かった、というように霊夢は優しい笑顔を見せた。
やっぱり夜は冷える。
いくら暖かい料理を食べたあとでも寒いものは寒い。
お風呂入ってきたら、と霊夢が言うので確かに少しは温まるかもしれないと思い、お風呂に入ることにした。
沸かしたばかりのお湯は熱いくらいで、あまり長く入るとのぼせてしまいそうだ。
体が温まったので上がることにした。
「温まった」
「まぁ、少しは……」
今は入ったばかりなのでぽかぽかしてるが、すぐにまた冷えるだろう。
「泊まっていくでしょう隣の部屋に布団敷いといたから、先に入ってていいわよ」
私はお風呂入ってくるから、と言いながら霊夢はお風呂の方に歩いていった。
「私の返事は聞かないのな……」
まぁ特別な用事も無いので大人しく泊まることにする。
冷めないうちに寝てしまうのも手だと思い、霊夢に言われた通り先に布団に入っておくことにしようと立ち上がり、隣の部屋へと繋がる扉を開いた。
……そういう事か。
扉を開けた先にあったのは、部屋のど真ん中に敷かれた1組の布団だった。
先に布団に入っておけなんて変だとは思ったんだ。
あいつも大概素直じゃない。
とは言ってもこのままじゃ寒いのでどうにでもなれ、と布団に入ることにした。
もう寒いどころの騒ぎじゃない。
きっと今頃あいつは、お風呂の中で私の反応を想像して笑ってるだろう。
またあいつにいいようにされてるとわかっていながらも心臓はばくばく五月蝿いし、頬は火照って仕方ない。
何か、私だってあいつの計画を狂わせるようなことが出来るはずだ。
火照った頭で必死に考える。
このまま流されて、あいつのいいようにされるのは気に食わない。
いっその事寝たフリをしてしまえば少しは動揺を見せるかもしれないと思い、私は寝たフリをすることにした。
しばらくして、扉が開かれて霊夢が入ってきた。
霊夢は自分が入ってきても何も反応を示さない私を不思議に思ったのか声を掛けてきた。
「魔理沙」
ここで返事をしたら意味が無い。寝たフリを続ける。
「……寝ちゃったの」
霊夢はそう言いながら布団の上にしゃがみ込んだようだった。
「…寝てないよね、魔理沙」
被っていた布団を捲られて、外気に触れる。寒い。
首筋に触れる霊夢の指は、風呂上がりだからか、温かかった。
寝たフリをやめない私を見て呆れたのか、霊夢は溜息をついた。
やめたらなんとなく負けなような気がしてやめるタイミングを失ってしまった。
「したくないんなら別にいいけど」
「え」
あ、しまった、そう思った時にはいつも手遅れ。
霊夢は楽しそうににやにや笑ってた。
また、またこいつのいいようにされてる。
「期待してたんだ」
「してない」
このままじゃ、またいいようにされる。
「嘘、こんなに顔熱いのに」
「熱くない」
顔が両手で包み込まれる。
優しく優しく、撫でるように指の先で軽く擦りながら。
こうしてから目を合わせたら私が抵抗出来ないのを霊夢は知ってる。
「…いじわる」
「あら、そうかしら」
そのまま唇を奪われる。
布団から出てるから寒いはずなのに、暑いくらいで頭がくらくらする。
ちょっとだけ目を開けると楽しそうに笑ってる霊夢の顔が目に映った。
目開けるの禁止って言ってるのに。人のこと言えないけど。
「はい、おしまい」
「……え」
まだまだこれから、そう思って受け入れかけてた時に突然そう告げられて驚きと不満が混ざったような声が出た。
ここまでこんなに期待させておいてこんなのって、こんなのって。
「やっぱりいじわる」
「酷いわね」
事実だ。酷いわけないだろう。
「…んー、ちゃんと頼めたらやったげる」
確信犯。こいつ、絶対最初からこれが目的だったんだ。
「霊夢の方が酷いじゃんか」
「一言頼むだけよ簡単じゃないの」
簡単なわけないだろう。
プライドとかそういうのが邪魔して簡単に言えるわけない。
「れ…」
「なに」
やだもう、恥ずかし過ぎる。
それなのに霊夢は優しそうな顔で見守ってくれてるからどうすることも出来ない。
いっその事、笑いながら聞いててくれた方が良かったのに。
「わた……あの、うぅ」
「大丈夫、大丈夫」
挙句の果てには頭を撫でられながら、抱き締められながら、少しずつ言葉を続ける。
あぁ情けない。
諦めにも似たような溜息を1つついて、決心したように溜まったままの唾液を飲み込む。
「……して」
「して」
「くだ、さい……」
よく出来ました、と霊夢は子供に言うみたいに言って、子供を可愛がるみたいに私の髪をくしゃくしゃにしてきた。
それでもやっぱり嬉しくて、自分でも単純過ぎるなと思う。
外はきっと寒いし、今夜も冷えるだろう。
だからこんな日は2人で温めあって、愛し合って過ごしてしまおう。
まだほんのりと毛先が湿ってる霊夢の髪を指に巻きながら、寒いのも嫌いなだけじゃないと改めて実感した。
もう少し経ったらもっと寒くなって、雪が降って、それでも2人でいれば暖かいのだから、寒いのも悪くない。
【あとがき…】
はい。レイマリです。可愛いね。
昨日投稿できる予定だったんですけど「さぁ投稿しよう!!」ってときにデータ飛びました。
魔理沙さんがお布団に入るシーンから先が飛びました。
お布団シーンから先飛ぶの好きねぇ!!!って思ったんですけどこれ多分お布団シーン書くの楽しくて保存せんと書いちゃうからですね多分。
元は!!2000字でした!!!
これ!!3000字です!!!
増えました。おめでとうありがとう。
魔理沙さんがお布団入るシーンの先が激甘と化しました()
元は若干共依存風味のあるやつでしたけど自慰のやつと変わらんなるよね良く考えたら。
だからデータ消えて良かったのではって感はある。
とりあえずらぶぽぉしょんに続くお気に入りちゃんになりそうですうわい
元々はちょっと暗めのレイ←マリ依存を書くつもりだったんですけどなんか途中でやめました!!
この方がいいよね、うんうん。
暗めのやつは昨日のやつでおなかいっぱいなのでしばらく書かないかも〜……
これ書き始めてからここの単発を2個先に出したけど書き始めはこれのが早いのよ!?
のんびり書くつもりで書いてたからねぇ〜(そこまでのんびりじゃない)
今日もレイマリが可愛いです。
後半のデータ飛んだ後のシーンは甘々になるのが恒例ですね
口角上がっちゃってにやにやしながら書いてたのは内緒……。
ちょ〜っとだけSっけのある霊夢さん好きです
霊夢さんといる時だけはちょっぴりMっぽい魔理沙さんも好きです。
というか私の書くレイマリ大体それ。
とまぁね、ハプニングがあったからこそお気に入りちゃんになりそうな話が書けて結果オーライって感じです
終わりよければすべてよし!!!
後味の良い話はあんまり書けないけどね〜!!!
次は連載のどちらかかな??
また近いうちに会いましょー!!!またね!!
ぽいぽいのあとがき
言うことがあんまりない!!!
こういうレイマリが好きです
投稿頻度上げたいんだけど選べなくてこまる〜!!!
全部載せてしまえばいいのかもだけどね()
暇な時に載せるようにします